【登山者外来とは?】心臓病と向き合いながら安全に登山を続ける方法

目次

はじめに

こんにちは!市川です!

僕の自己紹介はコチラ

今日のテーマは「登山者外来とは?」です。

心臓病を患ってしまったけど、大好きな登山を続けたい


そう願う方は少なくないでしょう。

しかしながら、山岳遭難死因の第3位が心臓突然死であり、登山は心臓に大きな負担がかかる運動です。
したがって、心疾患を持つ登山者はさらに突然死のリスクが高いことが報告されています。

心筋梗塞の既往歴があると、登山中の心臓突然死リスクは10.9倍
M Burtscher. Risk of cardiovascular events during mountain activities. Adv Exp Med Biol. 2007:618:1-11.


松本協立病院では2019年4月〜登山者検診/登山者外来を開設しています。

登山者検診とは?

健康な・・・登山者を対象とした人間ドック

登山者外来とは?

心臓病を持ちながら・・・・・・・・・も登山を安全に楽しむためセカンドオピニオン外来

この記事では「なぜ登山者外来・・が必要なのか?」を皆さんに提示します。

結論から言うと、
登山は体にも心臓にも負担がかかる運動であり、心臓病患者はハイリスクです。
一方で、正しく行えば心臓に良い運動にもなる心臓リハビリとしても有用だと考えられます。

そのバランスを見極め、安全に山を楽しむお手伝いをするのが、この外来の役割です。

日本人の死因の第2位は「心不全」です。
つまり、歳を取れば多くの人が心臓病を患います。

すでに心臓病を患ってしまった方も、今は元気な方も、ぜひ今回の記事を読んで「登山者外来とは何か」をしっかり理解して、心臓病を持っていても安全に登山を楽しめるようになりましょう!

登山者検診・・についてはこちらの記事👇を参照!

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登山者外来とは?

松本協立病院で実施している登山者外来は、心臓病患者の登山再開・継続をサポートするセカンドオピニオン外来です。

かかりつけ医から診療情報提供書(紹介状)をいただき、その方の病歴・治療歴を正確に把握した上で、必要な検査をあらかじめ予定して、現在のリスクを評価しどのように登山を再開・継続していくのがよいかをアドバイスさせていただきます。

対象となるのは、次のような方です。

  • 心筋梗塞狭心症で治療歴のある方
  • 慢性心不全のある方
  • 心房細動などの不整脈を持つ方
  • 心臓手術カテーテル治療を受けた方
  • ペースメーカーを植え込んでいる方
  • 心臓病の既往はないが、登山中に心臓病を疑う症状がある方
    • 胸痛、激しい息切れ、動悸など

❌ 心臓病は一般に突然死のリスクが高い
❌ 登山そのものにもリスクがある

どちらも知識がない人からみれば「心臓病患者の登山はハイリスク」です。
したがって、一般論としては「心臓病患者が登山をすることは推奨できない」と結論づける医師が多いのが事実です。

「登山を再開していいのか?」
「どのくらいの山なら安全か?」
「どんな準備や検査が必要か?」

こんな疑問を心臓病登山も両方詳しい循環器専門医×国際山岳医が適切に評価してアドバイスします。

なぜ登山者外来が必要なのか? ー2つの理由ー

登山中の心臓突然死リスク ー適切な評価は必須ー

登山中の心臓突然死のリスクは、
❌ 心筋梗塞の既往=10.9倍
❌ 狭心症=4.7倍

とされています。
M Burtscher. Adv Exp Med Biol. 2007:618:1-11.

これらは決して無視できない数字であり、世間でのなんとなく「心臓病の方が登山をするのは危険」というイメージが具体化された数値です。

2023年に「過去30年の文献を整理して、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)患者の高所曝露リスクと管理を戦略を記した論文」が発表されました。
L Macovei, et al. Coronary Syndromes and High-Altitude Exposure—A Comprehensive Review. Diagnostics. 2023 Apr 1;13(7):1317. 

こちらの文献によると、
低酸素環境に対して、
①換気増加、交感神経興奮、心拍数上昇などで代償をはかる
②冠動脈疾患のある患者では、これら代償が十分でない
③血圧上昇や末梢血管抵抗変動がみられる
④結果的に潜在的なプラーク破綻や虚血リスクが増大する

とされています。

したがって、

現在の治療内容・病状をきちんと把握することがまずは重要です。
禁忌や高リスク(不安定狭心症、重度大動脈弁狭窄症、コントロール不良な不整脈など)は明確に除外して、高地には段階的に順応していく必要があります。

運動療法は心臓病に必要不可欠 ー登山は心臓リハビリとして有効⁉ー

現時点で登山が心臓病患者の予後を改善することを直接示した研究結果はありません
しかし、

心臓病患者さんを対象として行う、
心臓リハビリテーション(心臓リハビリ)の基本は「有酸素運動+下肢筋力トレーニング」です。
 
これは「登山の運動形態に非常に近い」です。

実際に心臓リハビリは以下の効果が証明されています。

冠動脈疾患:心臓リハビリで心血管死亡を26%減少Dibben et al. Eur Heart J 2023
 
慢性心不全:心臓リハビリで死亡・入院を有意に減少HF-ACTION試験, JAMA 2009
 
狭心症:心臓リハビリにノルディックウォーキングを追加することで運動耐容能・QOLが向上した(R Januszek et al. Medicina 2023)

安定した冠動脈疾患患者で、かつ治療が最適化されており、運動耐容能や心機能が良好であれば、標高 3,500m程度までの登山であれば比較的安全に可能である」との見解もあります。
L Macovei, et al. Coronary Syndromes and High-Altitude Exposure—A Comprehensive Review. Diagnostics. 2023 Apr 1;13(7):1317. 

登山は「正しく管理すれば、心臓病患者さんの治療の一部にすらなりうる」と僕は考えています。
登山を心臓リハビリの実践形式として設計します。

登山者外来の意義

  • 登山=危険だから避ける(もったいない)
  • 自己流で登山を続ける(ハイリスク)

登山者外来における新規心疾患検出率は20.8%にも及びます。
(既存の心臓病とは別 or 原疾患の進行)
やはり心臓病患者さんはハイリスクであることは事実です。

安全に登山を続ける方法を専門医とともに一緒に考えることで、
「登山を継続する心の充足」
より良い生命予後(≒健康寿命)を得る」
ことを目的にしているのが登山者外来です。

ぜひリスクを理解した上で、できるだけ安全に登山を続けることで、より良い健康寿命の延伸を目指しましょう!

安全最優先で登山をやめることで運動習慣が喪失してしまえば、結果的に健康寿命が縮まることになります。

安全の範囲内で登山を継続することで、
✔️運動耐容能の維持・向上
✔️心不全入院の予防
✔️生命予後の改善

が期待できます。

登山を単なる趣味ではなく、「治療の一部」として位置づけるのが登山者外来です。

心臓病を患ってしまったけど、登山を続けたい方は、まず当院に相談してください!

※ただし、不安定狭心症や発症6か月以内の心筋梗塞例は登山を控えるべきです。
適切に評価してから登山を再開しましょう。

受診の流れ

受診の流れは以下の通りです。

  1. 松本協立病院・地域医療福祉連携室(0263-35-6999)に電話で相談
  2. 地域連携室経由でかかりつけ医へ診療情報提供書(紹介状)を依頼します
  3. 紹介状をもとに担当医が検査内容を調整
  4. 受診日を決定し、松本協立病院へ受診
  5. 半日〜1日で診察・検査・結果説明を実施

2025年3月時点で、登山者検診・登山者外来受診者の51.7%が県外からの受診です。
ありがたい話で遠方から多くの方が受診してくれます。
そのため、事前にかかりつけ医から情報をいただいて、適切な検査を組んでおくことで長くても1日の受診で診察〜検査〜結果説明と終わらせられるようにしています。

松本協立病院は松本駅の目の前にあります。
原則、金曜日に実施しているので、土日はそのまま北アルプスへ遊びに行って下さい😁

どんな病気の方が受診しているのか?

過去に当院の登山者外来に受診してくれた方の病気は以下の通りです。

  • 陳旧性心筋梗塞
  • 狭心症
  • 冠攣縮性狭心症
  • ペースメーカー植え込み後
  • 心房細動
  • 発作性上室頻拍
  • 心室性期外収縮
  • 大動脈弁置換術後
  • 僧帽弁形成術後
  • 冠動脈バイパス術後
  • 心房中隔欠損症術後
  • 肥大型心筋症
  • 登山中の胸痛があるが他院で原因不明

心臓病であれば特に制限はありません。
「これでもいいのかな?」と迷ったら、とりあえず地域医療福祉連携室(0263-35-6999)に電話で相談して下さい。
僕の方で受診の可否を判断してお応えしますので、お気軽にご相談下さい。

登山者外来の実例を紹介

登山者外来でどのような診療をしているのか
特徴的な症例を3例紹介します!

  • ペースメーカー治療中の65歳女性
    ペースメーカー設定が登山向きではなかったため、設定を調整し、安全に登山を継続。
  • 登山中に胸痛が出るが原因不明の53歳男性
    精査の結果、冠攣縮性狭心症と診断。治療後に再び登山を再開。
     
  • 山小屋で心筋梗塞を起こした51歳男性
    山中で急性心筋梗塞を発症。当院でのアドバイスを受け、低山からリハビリ登山を再開。
冠攣縮性狭心症ってなんだっけ?という方はこちらのリンク
急性心筋梗塞ってどういう病気だっけ?という方はこちらのリンク

まとめ

まとめです!

山中は医療機関へのアクセスが悪く、山中での心事故は命に直結します。
心臓病患者の安易な登山は命の危険があることは事実です。

しかし、心臓病を患ったとしても必ずしも登山を諦める必要はありません。
適切な医療サポートを受けて、登山を続ける道があります。

大切なのは「適切な心臓病リスクの評価」「安全な登山方法で登ること」

登山は以下のように非常に優れた運動様式です。

  • 有酸素運動であること
  • 下肢筋力が鍛えられること
  • 登高ペースを調整することで運動強度を変えられること

適切に心臓病リスクを評価して、運動強度を調整すれば、
登山はむしろ心臓にとっても健康にとってもより良い運動となり得ます

松本協立病院の登山者外来は、登山を趣味として続けるだけでなく、“心臓病治療の一部”として活かすための専門外来です。

「心臓病を患ってしまったけど、これからも山に登りたい」
そんな方は、「松本協立病院 登山者外来へ」是非一度ご相談ください!

最後まで閲覧いただきありがとうございました!

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