はじめに:山から病院へ、バトンは渡された
こんにちは!市川です!
僕の自己紹介はコチラ

循環器内科医としての病院勤務の傍らで、国際山岳医(DiMM)として以下のような活動をしています。
✔️登山者検診/登山者外来による予防・登山サポート
✔️赤岳鉱泉山岳診療所を運営(日本で唯一冬季診療も行っている診療所)
さらに「登山をもっと安全に」をミッションとしてブログを通じて登山における医学的内容を発信しています。
市川智英
全3回でお送りしている“凍傷シリーズ第3弾”(最終回)です。
これまで
第1回:山中で起こる凍傷の実際
第2回:山中でできる凍傷初期対応
と記事を書いてきました。
第3回のテーマは「病院での凍傷治療」です。
本記事では、凍傷で病院を受診した後、「実際にどのような治療が行われているのか」について、八ヶ岳エリアで、いや、おそらくは日本で最も多くの凍傷症例を診ている諏訪中央病院での治療の実際を解説します!
タイトルでも表現したとおり、
「凍傷は受診さえすれば、治してもらえるわけではありません」
残念ながら、凍傷に関しては、どの病院でも同じ治療が受けられるわけではありません。

日本は国民皆保険をはじめとして医療制度が整備されているので、通常はどの病院でも受けられる治療にほとんど差はありませんが、凍傷に関しては残念ながらそういうわけにはいきません。
今回の記事を読んでいただければ、
- 日本における病院での凍傷治療の現実
- 日本一の症例数が集まる諏訪中央病院での凍傷治療の実際
- 凍傷治療ガイドラインとの比較とガイドラインの限界
について理解することができます!
凍傷を受傷してしまったとしても、これらの“情報を知っている”ことで適切な治療を受けられる可能性があります。
指を失いたくなければ、是非最後まで閲覧して下さい!
※「諏訪中央病院が日本一の凍傷症例数」というのは市川個人による独断と偏見です😅
でも、多分正しいと思っていますし、多くの山岳医の先生は同意してもらえるのではないでしょうか。
諏訪中央病院とは?
諏訪中央病院は、八ヶ岳西面の主要登山口と茅野駅の間に位置する二次救急病院です。
- 「あたたかな急性期病院」をスローガンとする二次救急病院
- 凍傷に限らず八ヶ岳で発生した多くの二次救急症例が集まる
- 冬季には多数の凍傷患者が搬送される
諏訪中央病院ホームページはこちら👇


なぜ凍傷が多いのか
八ヶ岳は、日本でも有数の凍傷多発エリアです。
- 都心から近く登山者数が多い
- 冬季も営業している山小屋が多い
- 厳冬期には −20℃前後、稜線では強風が吹き付ける
これらの条件が重なり、毎冬、諏訪中央病院には多くの凍傷症例が集まります。


凍傷治療の中心人物:光楽先生とは?
諏訪中央病院では、皮膚科の光楽 先生が凍傷治療を一手に引き受けています。
“こうらく”先生ではなく、“みつら”先生なのでお間違いなく😅


光楽文生先生
- 諏訪中央病院 皮膚科部長
- 信州大学皮膚科で研鑽
- 2009年〜諏訪中央病院で凍傷治療を開始
- 市川が知る限り国内で最多の凍傷症例を治療されている
現在は赤岳鉱泉山岳診療所の運営委員としても活躍していただいており、“山岳診療所と地域の病院を繋ぐ”重要かつ貴重な存在です。
本記事は、光楽先生から直接教えていただいた諏訪中央病院の凍傷治療の実際をWilderness Medical Society(WMS)凍傷予防・治療ガイドライン2024と比較しながら紹介します!
注意点:すべての病院で同じ凍傷治療ができるわけではない
まず大切な前提として・・・
- 凍傷に詳しい医師は少ない
- 高気圧酸素療法(今回紹介する凍傷治療)ができる病院は限られている
- 凍傷自体が希少な疾患で治療のエビデンスは不十分
- ガイドラインに記載されている治療は日本国内未承認の内容もある



「病院に行けばどこでも同じ治療が受けられる」わけではありません。
早期に”適切な病院”に繋がることが重要です。
創傷治療と凍傷治療の違い


創傷治療とは?
「創傷」=いわゆる「ケガ」に対する治療です。
- 「ケガ」は受傷時点でダメージはほぼ確定
壊死した組織は切除して、残存組織の修復を促す治療になります。
凍傷治療とは?
凍傷は、受傷時点では組織がまだ生存している可能性がある点が決定的に違います。
- 凍結による細胞障害
- 融解後に“進行性の微小血流障害”(血栓形成・炎症性浮腫・血管攣縮)が発生する
- 微小血流障害が持続すると、徐々に壊死が進行する



「この”微小血流障害”をいかに改善させるか」が凍傷治療の本質です。
✓壊死範囲をどこまで小さくできるか
✓末梢神経障害(しびれ/知覚異常)をどこまで抑えられるか
これらを目的に治療をしています。
「”微小血流障害”をいかに改善させるか」が凍傷治療の本質
- 壊死範囲をどこまで小さくできるか
- 末梢神経障害(しびれ/知覚異常)をどこまで抑えられるか
多くの病院では「凍傷治療」ではなく、「創傷治療」をしている⁈
凍傷受傷部位の多くは手足の指先であり、時として、切断を伴う治療を要するため、指先の創傷治療に長けた”形成外科医”が診ることが一般的です。
切断まで至らないような水疱などの皮膚の問題がメインであれば皮膚科医の出番です。
しかし、冒頭から解説しているように「凍傷治療を多く経験している」医師はごく限られています。
凍傷治療に長けた形成外科医・皮膚科医となるとさらに限定されます。
そして、一般の形成外科医・皮膚科医は凍傷治療のメイン薬剤である血栓溶解療法や血管拡張薬については「不慣れ」という医師のほうが多数派でしょう。
その結果として・・・
- 微小血流障害を改善させて壊死範囲を小さくするような治療は行われず
- “凍傷が完成(壊死範囲が確定)”するのを待ち、確定した傷を治す創傷治療のみを行う
残念ながら日本の凍傷治療の現状はこのような病院・クリニックが大半です。
※このような医療機関を批判する意図はありません。医師も人間です。めったに出会わない症例には対応できないこともあります。
本当の凍傷治療とは?
凍傷は受傷後(融解後)、微小血流障害によって約2週間かけて損傷範囲が決まっていきます。
凍傷治療の主眼はこの2週間の間に「いかに末梢組織の再灌流・酸素化をいかに行うか」になります。
そのための手段として、
- 血管拡張薬
- 血栓溶解療法
- 高気圧酸素療法
以上のような治療が行われます。
これらの治療開始は早ければ早いほど、指先の損傷範囲は小さくなります。
- 損傷範囲を減らすための2週間の再灌流治療・酸素化治療
- 損傷確定からの創傷治療
どちらも重要であり、この2つを合わせて凍傷治療になります。
コラム:凍傷と心筋梗塞は似ている?
(タップすると開きます)
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光楽先生にお会いして凍傷治療を学ぶにつれて、凍傷と心筋梗塞は非常に似ているなと感じています。
心筋梗塞は冠動脈が閉塞することで心筋が壊死してしまう疾患です。
治療の目標は、
できる限り速やかに冠動脈を再灌流させて、心筋への酸素化を回復させる
凍傷と一緒ですよね😊
心筋梗塞の再灌流の方法は緊急カテーテル治療がメインですが、血栓溶解療法や血管拡張薬も使用します。
凍傷も心筋梗塞も「壊死範囲をどこまで小さくできるか」が最初の治療目標になりますし、ここでほぼ予後が決まるといっても過言ではありません。
日本の凍傷治療の現実、「再灌流療法を行わずに、創傷治療のみ行う」というのは、循環器内科医の立場からすると、心筋梗塞に対して緊急カテーテル治療を行わずに、その後に合併した心不全治療のみ行うのと同義で、あり得ないですね😥
光楽先生には本当に期待しています!


登山中の突然死の主因「急性心筋梗塞」とは? 十勝毎日新聞 ■年7月●日 午後2:55頃、トムラウシ山(2141m)の登山道上で男性が倒れていると、登山者から消防に救助要請があった。男性は同日午後7:39 搬送先の病院で死...
諏訪中央病院での凍傷治療の実際
諏訪中央病院では以下の4つの柱で凍傷治療を行っています。
- 高気圧酸素療法:血漿を酸素化して、組織に酸素を届ける
- 血管拡張薬点滴:血管を拡張させて、組織に血流(酸素)を届ける
- 内服治療:抗炎症効果、血管拡張効果など
- 切断せざるを得ない時には・・・:断端縫合せずに指を伸ばす
高気圧酸素療法(HBOT:Hyperbaric Oxygen Therapy)


諏訪中央病院の凍傷治療の核心です。
高気圧酸素療法(HBOT:Hyperbaric Oxygen Therapy)とは、高圧酸素タンク内を2気圧100%酸素濃度にして、タンク内に滞在することで高濃度酸素を吸入させる治療です。
大気中の酸素は1気圧21%ですから、ざっくり10倍の酸素を吸入することになります。
諏訪中央病院のプロトコールでは、
- 1回1時間(加圧・減圧の時間を含めて1時間30分)
- 1日2回
- 基本は1〜2週間:凍傷の状況に応じて施行期間は調整
凍傷に対する高気圧酸素療法は保険収載されている治療ですが、保険が効くのは1日1回まで。
光楽先生いわく「もう1回はサービス」だそうです😊(患者さんの負担は増えません)
高気圧酸素療法はなぜ凍傷に効く?
通常は酸素化された血液が末梢組織に灌流することで組織が酸素化されています。
凍傷では末梢血管が血栓形成、攣縮などによって閉塞してしまうことから、その先の組織が低酸素状態=虚血になっています。
虚血は長時間続けば壊死となり、二度と組織は回復しません。
つまり、
凍傷に関していえば、
指先が壊死する前に、何らかの方法で指先に酸素を届ける必要があるのです。
高気圧酸素療法は、「水疱内の血漿を酸素化することで、血漿を介して虚血状態になった組織を酸素化する」という仕組みです。
つまり、血管を介さずに血漿(水疱)を介して酸素化するところがポイントになります。
※血漿とは今回は水疱内の液体のことだと思って下さい。


血漿を介して組織を酸素化することで・・・
- 血液粘度低下→血栓形成の抑制
- 炎症の抑制→浮腫や組織破壊の軽減
- 感染予防:好中球の活性化、嫌気性菌の抑制
- VEGF(血管内皮増殖因子)活性化 → 組織修復が促進
これらは全て凍傷組織にとって有利に働きます。
凍傷は緊急疾患
凍傷は、末梢組織が虚血状態(低酸素状態)となり、長時間経過して、壊死してしまえば二度と元には戻りません=切断に至ります。
つまり、虚血状態のうちに何らかの凍傷治療を開始する必要があります。
「できるだけ早期に凍傷治療開始することで重症度が変わる」と言うことです。
そのためにまずは一刻も早く受診して下さい。



諏訪中央病院では、夜間・休日でも緊急対応できる体制が整えられています。
血管拡張薬の点滴
諏訪中央病院では血管拡張薬としてアルプロスタジル(PGE1)を使用しています。
アルプロスタジル(PGE1)の持続点滴によって・・・
- 血管拡張作用:血管攣縮を解除して、血流を確保します
- 血小板凝集抑制作用(いわゆる「血液サラサラ」効果):融解後の微小血栓形成を防ぎ、血管閉塞を防ぎます。
凍傷組織に対する血流を改善させることで、酸素化を促す効果が期待できます。
ちなみに、
WMS凍傷治療ガイドライン2024では、
血管拡張薬として”イロプロスト(PGI2)”という薬剤の点滴治療を強く推奨しています。
“アルプロスタジル(PGE1)”の推奨度はやや低いという扱いです。
しかし、2025年12月時点でイロプロスト点滴薬は日本国内には存在しません(吸入薬しかない)。
そのため、日本国内ではアルプロスタジルを使用することが一般的ではないかと思います。
アルプロスタジルは、循環器領域では下肢閉塞性動脈硬化症などによる血流障害に対して、よく使用される薬剤です。
循環器内科医としての僕の感覚では、アルプロスタジルでもイロプロストと遜色ない血管拡張効果が期待できるのではないかと考えていますが、いずれにしても血管拡張薬だけで血流が改善する特効薬ではありません。
内服治療
詳細は割愛しますが、諏訪中央病院では主に以下の内服薬併用も行っています。
- プレドニゾロン
- 炎症抑制
- トコフェロールニコチン酸エステル
- 微小循環改善:末梢血管を拡張させて、血流を改善させる
- 血管透過性亢進の抑制:浮腫を防ぐ
- 血小板凝集抑制作用:血液サラサラ効果→血栓形成を防ぎ血流を確保する
- ビタミンB12
- 末梢神経障害・しびれ対策
諏訪中央病院での治療を駆使すると「指が落ちる人はかなり減っている」そうです。
一方で、凍傷部位のしびれは長期間残存することがあり、その対策としての薬剤です。
- 末梢神経障害・しびれ対策
切断せざるを得ない場合:「指を伸ばす治療」
残念ながら様々な治療を駆使しても、そもそもの重症度や来院までの時間によっては救えない指も出てきてしまいます。
そんなときでも光楽先生はギリギリまで諦めません。
少しでも指を長く残す、指を伸ばす治療を行います。


“Demarcation(分界線)=壊死組織との境界”がはっきりしてきたら、
従来の方法であれば・・・
- 分界線よりも手前で骨を切断し、指先を縫合するための縫い代を残す。
分界線よりもかなり指が短くなってしまう。
諏訪中央病院では、形成外科領域で指切断の際に一般的に行われる二次治癒を利用して・・・
- 分界線ギリギリで切除
- 断端を閉じない(切断面は開放したまま)
- プラスモイスト+プロスタンディン軟膏でカバーして上皮化を待つ
上皮化とは、切断面に皮膚が生えてくるイメージです。
この治療によって分界線よりもさらに数mm指が伸びるとのことです。
WMS凍傷予防・治療ガイドライン2024で推奨されている凍傷治療
WMS凍傷予防・治療ガイドライン2024における病院での凍傷治療の全体像は以下の通りです。
- 初期評価と全身管理
- 低体温症治療を優先(推奨度:強)
- 脱水補正(推奨度:強)
- 薬物治療
- 抗炎症剤:NSAIDs(イブプロフェン)(推奨度:弱)
- 血管拡張薬:イロプロスト(推奨度:強)
- 血栓溶解療法:t-PA(推奨度:強)
- 創傷治療
- その他治療:高気圧酸素療法(推奨度:なし、データ不足)
ここでガイドラインの凍傷治療を全て解説すると超絶長くなってしまうので、割愛します😅
今回はガイドラインで、
- 血管拡張薬イロプロストに次いで推奨されている血栓溶解療法(t-PA)
- 実はガイドラインでは推奨されていない高気圧酸素療法
について諏訪中央病院での治療と対比しつつ解説します。
凍傷ガイドライン2024と諏訪中央病院の治療比較
血栓溶解療法:t-PA
t-PAとは正式名称は「組織プラスミノーゲン活性化因子」という長い名前ですが、要するに「最強の血栓溶解薬」です。
脳梗塞や心筋梗塞、肺血栓塞栓の治療でも使われる薬で、血管に詰まった血の塊(血栓)を、強力なパワーで溶かして流してしまいます。
その強力な血栓溶解作用と引き換えに、出血の副作用が多いことでも有名です。



完全に僕の私見ですが、日本の山岳医の先生は”凍傷に対して血栓溶解療法: t-PAを使いたがる傾向にある”気がします。
この理由としては、
- ガイドラインで最も推奨されているイロプロスト(血管拡張薬)は日本で販売されておらず使えない
- “イロプロストが使用できないときに考慮すべき”とされているのが血栓溶解療法(t-PA)
だからなのかな?と個人的には思っています。
確かに血栓溶解療法(t-PA)はガイドライン上は「強い推奨」に位置づけられていますが、そのエビデンスは”Low quality”となっており、きちんとしたエビデンスがあるわけではない点には注意が必要です。
したがって、WMS凍傷予防・治療ガイドライン2024でも全例に推奨されているわけではなく、t-PAの使用条件が明記されています。
- PIP関節よりも中枢に及ぶGrade3〜4の深部凍傷
- 受傷(融解)から24時間以内であること
- 外傷・最近の手術歴・最近の脳梗塞・その他出血リスクがないこと
上記を満たした場合にt-PAの使用を考慮する。
WMSガイドラインでも「上記に加えて、イロプロスト(血管拡張薬)が使用できない場合にt-PAの使用を考慮すべき」となっており、割と消極的な推奨です。
なお、諏訪中央病院では血栓溶解療法(t-PA)は実施していません。
その理由を直接お伺いしたわけではないですが、高気圧酸素療法との併用が難しい点が挙げられるのではないかと僕は考えています。
【高気圧酸素療法とt-PA併用が難しい理由】
- 高圧酸素タンク内では持続点滴ができない
- 高気圧酸素療法中は約2時間モニター監視が難しい閉鎖空間に滞在するため、出血、血腫といった合併症にすぐに対応できない
t-PAはガイドラインのプロトコールだと最低でも6時間の点滴が必要になります。
その間、高気圧酸素療法を実施できない(凍傷組織の酸素化が遅れる)リスクや出血・血腫による虚血リスクを考慮すると、「t-PAよりも高気圧酸素療法を優先しているのかな」と、僕は考えています。



後述するように高気圧酸素療法は凍傷に対して有用である可能性が高く、合理的な判断だと思います。
と、ここまでは僕の想像でしたが、光楽先生に本記事をチェックしてもらった際に以下のコメントをいただきました。



当院でt-PAを使用しないのは、一言で言うと「脳出血のリスクがあるから」です。
手指を失っても登山はできますが、脳出血を起こしたら日常生活にも支障をきたすことになりますからね。
僕の想像よりもずっとシンプルな答えでしたね😅
僕自身は職業柄、肺血栓塞栓などに対して血栓溶解療法(t-PA)を使用することが割とありますが、その経験からも出血合併症は非常に多い薬剤だと言えます。
効果は非常に強いですが、その反面、出血も多くて、正直に言えばあまり使いたくはありません😅
苦い思い出がいっぱいあるので・・・。
これらの経験からは光楽先生のご意見に賛成です。
僕の私見としては、「高気圧酸素療法ができない施設で、出血リスクが低い方なら静注t-PAはアリかな」と思っています。
高気圧酸素療法(HBOT)
高気圧酸素療法に関するWMSガイドラインの扱いは「データ不足のため推奨レベルなし」です。
つまり、「凍傷治療として高気圧酸素療法を使用した知見が少なく、効果があるか分からない」というスタンスです。
凍傷に対する高気圧酸素療法の効果は1963年にLedinghamによって初めて報告されています。
「切断が避けられないと思われた虚血組織の血流が改善し、切断を回避できた」と報告しています。
その後は散発的な症例報告での成功例は報告されているものの、HBOTには時間とコストがかかるため無作為化比較試験(RCT)は行われていません。
一方で、2021年に発表されたMagnan MAらの研究結果は、興味深い内容です。
イロプロスト単独群(30名) vs. イロプロスト+高気圧酸素療法併用群(28名)で指の温存状態を調査した結果、
高気圧酸素療法併用群では指が温存されるオッズ比が45倍であった。
僕としては凍傷というエビデンスを確立しにくい分野のなかで「十分と言えるような結果を示しているのでは?」と考えています。



光楽先生には是非これに追従するようなデータを出していただき、高気圧酸素療法をガイドラインで推奨される治療に押し上げていただきたいです😊
赤岳鉱泉山岳診療所との連携
赤岳鉱泉山岳診療所と諏訪中央病院はLINEを使って連携しています。
その結果、以下のようにスムーズに凍傷治療を行っていただけるような体制を築いています。
- 患者同意の下でLINEを用いた画像・情報共有:凍傷状態の正確な判断
- 到着前から治療準備:スタッフ招集、機器の立ち上げ
- 諏訪中央病院に到着後すぐに凍傷治療開始
まとめ
まとめです!
全3回にわたる凍傷シリーズの最終章でした。
- 凍傷は進行性に壊死が進む緊急疾患です。
- 初期対応(第2回)と病院選定(今回)が極めて重要になります。
- 残念ながら”すべての病院で適切な凍傷治療が受けられる”わけではありません。
- 諏訪中央病院は、国内でも稀有な「適切な凍傷治療が受けられる病院」の一つ
登山者自身が正しい知識を持つことで、自分の手指を守ることができます!
最後まで閲覧いただきありがとうございました!
ついつい筆が進んでかなりの長文になってしまい、すみません😅
でも、その価値がある内容になっていると自負しています。
病院での凍傷治療を最新のガイドラインと比較しつつ、ここまで詳細に記載した文章は他にはないと思います(僕は見たことありません)。
- 登山者にとっては万が一の際にどういう経過をたどるのかイメージしていただく
- 医療従事者にとってはこの記事を参考に凍傷治療をより深く知ってもらい実践していただく
この記事がそんな助けになれば幸いです。
「ウチの病院も凍傷治療を積極的にやってますよ!」という医療従事者の方がいたら是非コメントお願いします🙏



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