はじめに
こんにちは!市川です!
僕の自己紹介はコチラ

循環器内科医としての病院勤務の傍らで、国際山岳医(DiMM)として以下のような活動をしています。
✔️登山者検診/登山者外来による予防・登山サポート
✔️赤岳鉱泉山岳診療所を運営(日本で唯一冬季診療も行っている診療所)
さらに「登山をもっと安全に」をミッションとしてブログを通じて登山における医学的内容を発信しています。
市川智英
今日のテーマは「ファーストエイドキット公開」です😊
皆さんはファーストエイドキットは何を持って行っていますか?

とりあえず市販の救急セットを買って、中身も確認せずにザックに入れっぱなし・・・
こういう方も少なくないのではないでしょうか?
- 消毒液
- 小さな絆創膏
- 使い方のわからない器具・・・
厳しい言い方ですが、それでは野外では使えません。
想像してみて下さい。
山で怪我をした・・・、体調不良になった・・・
そのとき天気はどうでしょうか?
風雨が吹き荒れているかもしれません。
そもそもが天候が悪いからこそ、怪我や体調不良にも繋がりやすいです。
- 目的:何のために持って行くのか?
- 快適ではない環境でも使えるものを考えて備えておく
この2点を考えて、ファーストエイドキットを選択・準備していく必要があります。
今回は、僕が実際に山へ持っていく「リアルなファーストエイドキット」の中身を全て公開します。
山岳医・循環器医である市川が大切にしている“3つのこだわり”とともに、それに答えるためのアイテムをご紹介します。
- こだわり①:野外環境からの隔離
自分と傷病者を守る:DKシェルター、Ultralight Survival Shelter 2 - こだわり②:収納と即時性
すばやく使える状態にしておく:THE NORTH FACEファーストエイドプラス - こだわり③:外傷処置の基本〜洗浄と湿潤療法〜
本当は1記事で“僕が使っているファーストエイドキットの中身”を全て紹介する予定でしたが、全く書き切れませんでした・・・😅
ということで、前後編に分かれています。
後編では・・・
- 体調を”可視化”するデジタルデバイス
- 山岳医が厳選した”山で使える市販薬”
についてご紹介します。乞うご期待。
今回はあまり深く考えずに楽しんで読んでもらえれば幸いです。
他人のファーストエイドキットって気になりませんか?
僕は気になります😊
もちろんちゃんとこだわりを持って必要な道具を持っている方もいるでしょう。
僕のファーストエイドキットが正解だなんてつもりはありません。
むしろ山岳医という立場上、他の方よりも多めでややかさばります😅
そして、日々の経験や他の人のキットをみて、今後も適宜修正していくでしょう。
是非、皆さんと理想のファーストエイドキットについて議論していきたいです!
それでは、どうぞ。
こだわり①:野外環境からの隔離
ファーストエイドは野外で行うものであり、野外環境は必ずしも快適ではない
したがって、次の2点を考慮しておきましょう。
- 野外環境からの”隔離”を想定しておく
- 全てのファーストエイドキットはすぐに使える状態にしておく
【隔離】DKシェルター、Ultralight Survival Shelter2


山中では雨が降ることもあれば、風が吹くこともあります。
その野外環境を考慮せずに、ファーストエイドキットを開いていると・・・
- 風雨によって装備が散乱してしまう
- 時間経過とともに低体温症が進行する
と言ったことに繋がりかねません。
したがって、「ファーストエイドを行おう」となった際にまず最初に行うことは“隔離”です。
雨・風・雪といった野外環境から”隔離”して、快適な状況を作った上でファーストエイドを行う必要があります。
そのために僕が使用しているのは、
- DKシェルター(Mサイズ):3〜8人用
- Ultralight Survival Shelter 2(LIFESYSTEMS):1〜2人用
です。
DKシェルターは国際山岳医の大城和恵先生が北海道警の山岳救助隊と秀岳荘とともに作った商品です。
D(どこでも)K(隠れる)という名のとおり、サッとかぶるだけのシステムです。
最初から袋状になっているためツェルトよりもかぶりやすいです。
単純にかぶって裾をみんなで踏むだけのシステムです。

また、袋の裾部分にはゴム紐の絞りもついているため、風で吹き飛ばされにくくなっています。




使い方は山岳医療救助機構のYoutubeをご覧下さい。
上記動画は救助隊用のLサイズですが、僕はMサイズ(3〜8人用)を持っています。
僕は山岳医として他の傷病者を入れることも想定して大きめを持っていますが、一般的には1-2人用で十分でしょう。
個人山行で単独で登る時には、1〜2人用としてUltralight Survival Shelter2を持って行きます。
DKシェルターSサイズもありますが、Ultralight Survival Shelter2の方が大分コンパクトで軽量なのでこちらを重宝しています。
基本構造はDKシェルターとほぼ一緒です(こちらがオリジナル?)


収納サイズは350ml缶に匹敵するコンパクトさ。重さもわずか180gと普段からザックに忍ばせても苦になりません。
【比較一覧表】
![]() ![]() Ultralight Survival Shelter 2 | ![]() ![]() DKシェルター Sサイズ | ![]() ![]() DKシェルター Mサイズ | |
|---|---|---|---|
| サイズ 幅×長さ×高さ | 45×140×90cm | 45×140×90cm | 115×180×110cm |
| 重量 | 180g | 250g | 460g |
| 使用人数 | 1〜2人用 | 1〜2人用 | 3〜8人用 |
| 素材 | 20dnシルナイロン | 30dnリップストップ ナイロンPUコーティング | 30dnリップストップ ナイロンPUコーティング |
| 特徴 | 本体に接続した収納袋 座面が2カ所あるので 風で飛ばされにくい | 大きめの吹き流し | 大きめの吹き流し 裾部分にはゴム紐の絞り |
| 価格 | 20,900円 | 10,500円 | 14,800円 |
| 購入する | 購入する | 購入する |
こだわり②:収納と即時性
- 野外環境からの”隔離”を想定しておく
- 全てのファーストエイドキットはすぐに使える状態にしておく
前述の②に関係する話ですね。
【収納】THE NORTH FACEのファーストエイドプラス


ファーストエイドで重要なのは「コンパクトに収納できて、必要な時に素早く取り出せること」です。
- ザックの中で埋もれてもすぐ見つかる視認性
- ファーストエイドキットは自分が使うとは限らないため、赤・黄色など注意喚起を促す色がオススメです。
- 「3面開き・メッシュポケット」の分類収納
- 内部で分類できるため、緊迫した場面でもガサゴソ探す必要がありません。
- 耐水性・耐久性
- 完全防水ではないですが、100デニールの生地と撥水ファスナーで内部のキットを保護してくれます。
- ちょうど良いサイズ感
- H15×W20×D7.5cm(容積3L)
- ちょっと大きいなという方には半分のSサイズ(容量1.5L)もあります。
- かっこいい😊
- テンションが上がるギアって大事じゃないですか?








今回は詳細は省略しますが、中身に関しても“できるだけすぐ使えるよう”に工夫してあります。
病院と違って、山の中で処置をするって本当にストレスなんです😓
時間が経てば経つほど、低体温症リスク、日没リスクも高まります。
少しでも現場で楽をできるよう、事前に準備しておきましょう!
それではこの先は具体的な中身について紹介していきます!
こだわり③:外傷処置の基本〜洗浄と湿潤療法〜
【感染予防】ニトリルグローブ


ファーストエイドの基本は「感染予防」です。
血液や唾液、尿といった体液は感染性を持っている可能性があります。
特に怪我を取り扱う際には必ず手袋をしましょう。



ファーストエイドキットってあまり使わないので、ザックの奥底に行きがちじゃないですか😅
怪我をしている人を目の前にして、ザック内をひっくり返さなくてもいいように、
- 自分がはめるニトリルグローブ
- 傷病者自身に渡して簡易的に止血してもらうガーゼ&ビニール袋
僕はこの2つはファーストエイドキットとは別にザックのすぐに出せる場所にいれてあります。
- 手荒れ防止にアクセラレーターフリーがオススメ
- ゴムの生成過程で加硫促進剤(アクセラレータ)というものを使用するらしいですが、これによるアレルギー・手荒れがよく起こります。
僕自身もアクセラレータによるアレルギーがあります。手袋をよく使う医療従事者あるあるです😅
- ゴムの生成過程で加硫促進剤(アクセラレータ)というものを使用するらしいですが、これによるアレルギー・手荒れがよく起こります。
- 色は青色系がおすすめ
- 青や緑色の手袋は血液がついても真っ赤に見えません。
人は真っ赤な血液をみると興奮して正常な判断がしづらくなります。手術着や手術用の手袋に水色や緑が多いのも同じ理由です。
- 青や緑色の手袋は血液がついても真っ赤に見えません。
- 黒のニトリルグローブはオススメしない
- 黒は血液がついてもわかりにくいです。血液が付着していることに気づかず、他の道具を触った際に血液汚染させてしまうリスクがあります。
僕が使っているニトリルグローブはこちら👇
余談ですが、冬季にはVBLとしても使えますよ😊


【洗浄】「消毒」はしない! プラティパスで作る「高圧洗浄ボトル」
僕のキットには消毒液は入っていません。
現代の医学において、傷口への消毒は「組織を痛め、治りを遅くする」ため推奨されていません。





大切なのは、”水で汚れをしっかり落とす(洗浄)”です。
でも、山の中では大量の水は使えないので、少量の水でも効率良く洗うために、“プラティパスを使って高圧洗浄”します。
洗浄の目的が「汚れを落とす=異物(土・砂)の除去」なので、単純に水をかけても落ちません。
“圧力をかけて洗浄する”ことが重要です。


事前にペットボトルのキャップに穴を開けておきます。
ご存じの方も多いと思いますが、プラティパスって普通のペットボトルキャップがつくんですよね。




したがって、高圧洗浄したいときだけ、「穴あきペットボトルキャップ」にキャップを交換すれば、傷口に向かって高圧で洗浄できます。
水の量も節約できるので一石二鳥ですね。
写真のような0.5Lのプラティパスを洗浄用に持って行くこともありますが、僕自身は最初から飲料用として2Lプラティパスに洗浄用も含めて多めに水を入れておいて、550mlのRiversのボトルに移し替えて、そこから水を飲むようにしています(飲みやすさ+自分の唾液で汚染しないように)。
これなら、専用の洗浄液を持ち歩く必要がなく、飲み水と兼用できるので軽量化にもなります。
【保護】湿潤療法〜ワセリン+ガーゼ保護のススメ〜
創部保護の基本は“湿潤療法”です。
適切に洗浄して、異物を全て除去できれば、ワセリン+ガーゼ保護で湿潤環境を保つことが重要です。


- セミオープンな環境:ワセリンで湿潤環境を保ちつつ、完全密閉ではないため、酸素の透過性が確保されるため、嫌気性菌感染のリスクを相対的に下げられます。
- ドレナージ機能:過剰な滲出液はガーゼ側に吸収されるため、創部に膿などが貯留しにくい構造です。
- 再処置の容易さ:創部へのガーゼ固着を防ぐため、下山後の医療機関での処置がスムーズに行えます。
チューブ状のワセリンが使いやすいと思います。
僕は普段60gのものを持ち歩いていますが、やや多いので、ベビーワセリンリップ10gが良いかもしれません。
ワセリンバーム(個包装1g)というのも、1回ずつ使い切りで使えそうなので、軽量化重視の人にはいいかもしれませんね。
山の怪我ではキズパワーパッドは良くない・・・



湿潤療法といえば「キズパワーパッド」はどうなの?
湿潤療法といえば、キズパワーパッドをはじめとしたハイドロコロイド素材があります。
こちらは同じ湿潤療法であっても、登山におけるファーストエイドとしてはオススメできません。
山中での外傷は、岩、土壌、植物によるものが多く、これらは“汚染創”として扱うのが原則です。
したがって、以下の理由から山中での使用はオススメできません。
- 完全な洗浄が困難=残存細菌のリスク
- 嫌気性菌の培養リスク:
土壌中には破傷風菌ガス壊疽菌などの嫌気性菌が存在します。不十分な洗浄のまま密閉空間を作ると酸素がない状態を好むこれらの菌の発育を促す可能性があります。 - ドレナージの阻害:
感染の初期兆候として排出される浸出液や膿が外部へ排出されず、内部に貯留することで感染が増悪する可能性があります。 - 創部観察が困難:
ハイドロコロイド素材は一度貼ると創部の観察が困難となり、剥がしてしまうと再利用できません。感染兆候の発見が遅れるリスクがあります。
【固定】骨折・捻挫の救世主「サムスプリント」


サムスプリントをご存じですか?
山で最も多いトラブルの一つが、転倒・滑落による骨折や捻挫です。
“サムスプリント”とは、自由自在に曲げられる「副え木」です。



骨折・捻挫の固定なんてトレッキングポールや枝で代用できるのでは?



確かにその通りですね。
僕もサムスプリントがなければ、そうします。
実際に全ての登山で持ち歩いているわけではありません。
しかし・・・、
トレッキングポールを毎回持って行きますか?
トレッキングポールはそのままで使うと硬くて痛いので当て布が必要です。
自分が骨折・捻挫をしているときに、枝を探したり、当て布をしたり・・・
なかなかそんな余裕はありません。
繰り返しになりますが、ファーストエイドの現場では時間をかけずに処置することが大切です。
サムスプリントは、
- 軽量で平らなのでザック内でも場所を取らない
- 表面はウレタンフォームで柔らかい
- 自由に曲がり、サイズ調整も簡単
野外現場で素早く対応するのに向いています。
【使い方】今回は割愛😅
こちらのサイトをご覧下さい
サイズはいろいろありますが、スタンダード(L914×W108×D5mm)が汎用制と携帯性のバランスからオススメです。
本物はちょっとお高いので、こちらのニセスプリント(失礼😅)も使えますが、明らかにパクっているので自己責任でお願いします👇
【テープ類】テープ類の使い分け


僕が持ち歩いているテープ類は以下の通りです
- 保護材などの固定に使用
- 伸縮バンテージ
- 自着包帯
- 肌に直接貼る
- 非伸縮テーピング
- キネシオロジーテープ(セラポアテープFX)
伸縮バンテージ


- 弾性・固定力は強く、止血にも使える
- 両端にベルクロがついているので、テープ不要で固定できる
- ややかさばる、ちょっとお高い
サイズは100mm×4.6mがオススメです!
自着包帯


- 自着するので巻きやすい(ずれない)
- 弾性があって伸びるので関節や頭部でも固定しやすい
- 自着するので末端に粘着テープは不要
- 再利用可能
- 捻挫のテーピングとしても使用可能
- 登山ではテーピング後も行動するため腫れによる血流障害を防ぐためにも非伸縮に加えて自着包帯での固定が有用
自着包帯はとにかく便利です。
値段も安価なので、非常にオススメします!
ファーストエイドキットに1つはあって損はしません。
サイズは50mm×4.5mがオススメです!
非伸縮テーピング
テーピングと言えば・・・の、皆さんがイメージされる白いテーピングテープですね。
基本的には関節を固定するために非伸縮でほとんど伸びません。
関節をガチガチに固めるため、安静時に使うならいいのですが、登山中のように今後も行動を継続しないと行けない場合には、腫脹が激しくなり、食い込むことで血流障害を来しやすい点に注意が必要です。
サイズは38mm幅がオススメです。
足首や膝に使いやすいサイズで、クラッククライミングにも使いやすいサイズ感です😊
キネシオロジーテープ(セラポアテープFX)
伸縮性が高く、目的としては「固定」ではなく、「筋肉のサポート」になります。
- 膝痛の予防: 下山時の膝の負担を減らす
- 足の攣り(つり)対策: ふくらはぎに貼って疲労を軽減する
- 靴擦れ防止: 伸縮性があり剥がれにくいので、かかとに貼って皮膚を保護する
※予防がメインになるので「持参する」よりも「登山前に貼ってから出発」が一般的。
サイズは50mm幅がオススメです!
山岳医としてのオススメは「セラポアテープFX」
- 通常のキネシオロジーテープは台紙がついており、事前に長さを合わせてカットする必要がある。
- セラポアテープFXは台紙がないので、普通のテープのように使えて、手でカットすることもできる
- 山岳医療現場で速やかに貼ることができるのがメリット!
- 山に持って行くならこちらの方が使い勝手がいいです。


前編まとめ
まとめです!
ファーストエイドキットを考える際に、「何のために持って行くのか?」
つまり、目的を考えておくことが大切です。
その目的が僕の場合には“3つのこだわり”です。
山岳地帯という厳しい野外環境を想定した準備をしておく必要があります。
山岳医市川として、以下のようなこだわりを持って装備を選んでいます。
- こだわり①:野外環境からの隔離
自分と傷病者を守る:DKシェルター、Ultralight Survival Shelter 2 - こだわり②:収納と即時性
すばやく使える状態にしておく:THE NORTH FACEファーストエイドプラス - こだわり③:外傷処置の基本〜洗浄と湿潤療法〜
※商品名にAmazonリンクを貼ってあります。気になる製品は是非チェックしてみてください!
“3つのこだわり”としましたが、実は循環器内科医・山岳医としてのこだわりはまだあります😅
今回は主に“隔離の重要性”と“外傷処置のための道具”を紹介しました。
後編は僕の本領である内科医としての“体調不良”にフォーカスをおいた内容です。
次回【後編】では・・・
- 身体の不調を”可視化”するデジタルデバイス
- 酸素化と脈拍数を見える化するパルスオキシメーター”コニカミノルタPULSOX-Neo“
- 心拍数・不整脈を管理する”Garmin Fenix8”
- 心臓を見える化する極小携帯心電計”オムロンHCG-8060T”
- 山岳医が厳選した”山で使える市販薬”
- 今回は誰もが入手可能な市販薬で厳選
をご紹介します!
前編と違って、ある意味では「山岳医らしい」マニアックな装備もありますが、薬剤に関しては誰でも購入可能な市販薬を紹介します。
是非楽しみにお待ちください!
以上です。最後まで閲覧いただきありがとうございました!




















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