【11/3更新】VBL(ニトリル手袋)の記事を全面リライトしました(2026年改訂版)▶

VBLとは?冬山のニトリル手袋|手が冷えない仕組みと使い方

雪の舞う冬山の稜線で、ニトリル手袋の上にオレンジの保温手袋を着けた手。「冬山で手が冷えない!ニトリル手袋VBL 汗で保温層を濡らさない仕組み」の文字
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目次

はじめに

こんにちは!市川です!

僕の自己紹介はコチラ
市川智英の自己紹介。循環器内科医・国際山岳医(DiMM)、松本協立病院 循環器内科、赤岳鉱泉山岳診療所。モットーは「心臓病があっても安全に山を楽しめる」

循環器内科医としての病院勤務の傍らで、国際山岳医(DiMM)として以下のような活動をしています。

✔️登山者検診/登山者外来による予防・登山サポート
✔️赤岳鉱泉山岳診療所を運営
(日本で唯一冬季診療も行っている診療所)

さらに「医療から登山をもっと安全に」をミッションとしてブログを通じて登山における医学的内容を発信しています。

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今回の記事は2025年3月24日に公開した記事ですが、ブログを始めた当初の記事ということもあり、気になる表現・わかりにくい表現もあったことから、今回、2026年10月に全面改定しました。
気合を入れて書き直したので、是非お楽しみください😊

今日のテーマはこちら👇
「VBL(ベイパーバリアライナー)」です。
VBLって何?って方が大半だと思いますが、「冬山で一番下にニトリルグローブをつけるやつ」といえばピンとくる方もいるのではないでしょうか?

冬山で手袋の下に着けるニトリル手袋
ニトリルグローブ

冬山で、手袋の下にニトリル手袋を着けている登山者を見かけることが増えました。

こんな経験はありませんか?

  • 厚い手袋をしているのに、指先が冷える
  • 登山で手汗をかくので、手袋の中が湿ってしまう
  • ニトリル手袋が暖かいと聞いたけれど、信じられない

あれ、ホントに暖かいのかな?
濡れちゃうって聞いたけど、逆に凍傷になっちゃうんじゃないの?

結論!

ニトリル手袋を一番下に着けると、手袋の保温層が汗で濡れないので、保温性が維持されます。
手は汗で濡れますが、凍傷の原因にはなりません。

冬山で手が冷える原因のひとつは、自分の汗です。
登りでは手も汗をかき、その湿気が手袋の保温層にたまっていきます。
そうすると、「空気と比べて水は熱伝導率が高いため、保温層の効果が落ちて手が冷えてしまう」ということになります。

ネットには「ニトリル手袋は暖かい」という声と「濡らすと凍傷になる」という声の両方があり、自分で試してよいのか判断しにくいのが現状だと思います。

冬の山を、手を冷やさずにこれからも楽しみ続けるために。
今回は、ニトリル手袋を使ったVBLという方法の仕組みと、僕自身が実践しているやり方・注意点をお伝えします。

今回の記事でわかること
  • 冬山で手が冷える原因のひとつは、汗で手袋の保温層が濡れること
  • 濡らしてはいけないのは”保温層”
  • VBLは肌だけをあえて湿らせ、汗の蒸発を止めて保温層を守る方法
  • 行動中は外さない。濡れた手を冷たい外気にさらすのはNG。
  • 衣服が濡れた緊急時には、エマージェンシーシートを体に巻くのもVBL

すでにニトリルグローブを使ってVBL効果を実感している人も、懐疑的な人も。
大事なことは”VBLの仕組みを理解すること”です。根っこのところを理解していれば、応用できます。
資源の限られた登山ではその場にあるものを使って臨機応変に対応する応用力が問われます。

是非、VBLの概念を理解して登山の様々なシーンで活かしてください!

VBLとは ── 肌に一番近い層に「水を通さない層」を置く

VBLの4つの使い方の図解。①手(ニトリル手袋)は冬山の行動中、②足(VBLソックス)は冬靴での長い行動、③寝袋(VBLライナー)は長期の遠征、④緊急時はエマージェンシーシート

VBL(Vapor Barrier Liner:ベイパーバリアライナー)とは

通常のレイヤリングの考え方。汗の水蒸気はベースレイヤー・ミドルレイヤー(保温層)・シェルレイヤーを通って外へ逃げる。汗が多いと、冷えた保温層の中で水に戻り、保温性が落ちる。
VBL(ベイパーバリアライナー)の考え方。肌のすぐ外側のVBLで汗の水蒸気を止め、肌側はあえて湿らせて湿度ほぼ100%にする。汗がそれ以上蒸発できず、保温層は乾いたまま保温性が落ちない。

肌のすぐ外側に水(水蒸気)を通さない層を置き、汗の水分を内側にとどめて、外側の保温層(ダウン・化繊綿・フリースなど、空気をためて温かさを保つ層)を乾いたまま保つ方法です。

冬山で最も手軽なのは、ニトリル手袋を一番下に着けるやり方です。

登山のレイヤリング(重ね着)は、ふつう汗を外へ逃がして濡れないようにする考え方です。
VBLはその反対で、汗の水分を肌の近くで止めて、外側の保温層まで届かないようにします。

山では「濡れてはいけない」が常識です。
でも、本当に濡らしてはいけないのは保温層のほうです。
VBLは肌だけをあえて湿らせて、保温層を乾いたまま守る方法なのです。

VBLはなぜ生まれた?

VBLの考え方は、もともと極寒地での凍傷を防ぐための防寒靴で使われてきたものです。

極寒の山で何日も行動していると、汗で湿った靴や靴下を乾かす機会がほとんどありません。
断熱材は一度濡れるとスポンジのように水を含み、保温力が大きく落ちます。
そこで、汗を内側に閉じ込めて、断熱材そのものを濡らさないという発想が生まれました。

その代表が、米軍の寒冷地用の防寒靴(通称「コリアンブーツ」)です。外側も内張りも水を通さない構造で、間に断熱材を挟んでいます。
1965年の米国山岳会の年報では、アラスカの登山者がこの靴をマッキンリー(デナリ)など極寒の山に勧めており、「この靴を履いてマッキンリーで凍傷になった人はいない」と書かれています。
一方で、「通気しないので靴下は濡れる」という弱点も、すでに指摘されていました。

Davis WE. Avoiding Frozen Feet—Cold Weather Footgear. Am Alpine J. 1965;14(2):373.

その後、アウトドア用品の分野で、靴下・手袋・寝袋へと応用が広がっていきました。

VBLには4つの使い方があります👇

使う場所どんな場面でこの記事での位置づけ
手(ニトリル手袋)冬山の行動中手軽で、まず試してほしい方法
足(VBLソックス)冬靴での長い行動・テント泊毎晩乾かせるなら選択肢になる
寝袋長期の遠征着替えが大変で、山では現実的でない!?
緊急時(エマージェンシーシート)濡れて冷えた状態で救助を待つとき知っておくと役立つ

僕は2年ほど前から、冬山でニトリル手袋のVBLを使っています。
メリットはありますが、デメリットもあるため万人向けではありませんが、VBLの正しい理屈は登山者こそ知っておくべきです。

冬山で手が冷える理由 ── 汗で保温層が濡れると、断熱が落ちる

冬山で手が冷える2つの理由。ふつうの手袋では、汗が保温層の中で水に戻って空気の層が失われ手の熱が逃げる(水は空気の約20倍以上熱を伝えやすい)うえ、汗が蒸発するときに熱を奪う(気化熱)。ニトリル手袋を一番下に着けると、汗が保温層まで届かず保温層は乾いたまま、湿度ほぼ100%で汗が蒸発できず気化熱で奪われにくい。肌側はあえて湿らせ、保温層は乾いたまま守る。

汗で手袋の保温層が濡れる

登りでは、手のひらからも汗が出ます。
その水蒸気が手袋の保温層に入り込み、外の冷気で冷やされて保温層の中で水に戻ります。

保温層は、繊維のすき間に空気をためることで、断熱性を発揮し、熱を逃がさないようにしています。
そこに水が入ると空気の層が失われます。
水は空気の約20倍以上も熱を伝えやすいため、手の熱がどんどん外へ逃げていきます。

服の中の保温層が湿ると、どれくらい断熱が落ちる?

  • 水を通さない上着の下の、肌から離れた中間層を湿らせて歩く実験では、服全体の断熱が約16%低下した

Bröde P, et al. Eur J Appl Physiol. 2008;104(2):341-349. (PMID: 18084775)

  • 気温20℃の実験室での結果であるため、冬山ではもっと影響が大きい可能性があります。

汗が蒸発するときに熱を奪う

汗は、蒸発するときに体から熱を奪います(気化熱)。
汗1gが皮膚から蒸発すると、約580カロリー(0.58キロカロリー)の熱が失われます。
夏には体を冷やしてくれる大切な仕組みですが、冬山ではそのまま冷えの原因になります。

VBLはこの2つを止める

ニトリル手袋を一番下に着けると、

  • 汗の水分が保温層まで届かない=保温層が乾いたまま、断熱が保たれる
  • 手袋の中が湿度ほぼ100%になり、汗がそれ以上蒸発できない=気化熱で熱を奪われにくい

手は湿りますが、肌側はあえて湿らせ、保温層は乾いたまま守る。
「山では濡れてはいけない」の本当の意味は、「保温層を濡らしてはいけない」ということです。
これがVBLで暖かさが保たれる理由です。

水を通さない層(VBL層)を追加すると、熱の損失はどれくらい減る?

  • 濡れた下着を着せた人形(サーマルマネキン)を毛布で包む実験で、濡れた服の外側に水を通さない層(VBL:ベイパーバリア層)を足すと、体から逃げる熱が19〜42%減った。

Henriksson O, et al. Prehosp Disaster Med. 2012;27(1):53-58. (PMID: 22445055)

  • 人形を使った実験であり、汗をかく人の手で測ったものではありません。

実際に、濡れた手袋のせいで凍傷になった事例もあります。
冬山では、手袋の保温層を濡らさないことが手を守る基本です。

凍傷になった登山者の実例は、以下の記事で解説しています👇️

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濡れた手で凍傷にならない?

ニトリルグローブをつけると、手が濡れるでしょ。
水の熱伝導率は高いから、凍傷になりやすくなるのでは?

VBLに関して、こんな反対意見をお持ちの方もいらっしゃいます。

確かに水は空気の約23倍も熱を伝えます。
でも、熱がどう逃げていくかを順番に見ていくと、手の表面の汗の膜そのものは、ほとんど問題にならないことがわかります。

濡らしてはいけないのは、手ではなく保温層。①汗の膜は、ほぼ体温のまま:手30℃→汗の膜0.1mm→ニトリル0.1mm→保温層6mm→外気−20℃で、汗の膜で下がる温度は約0.06℃、温度が下がるのはほぼ保温層の中。熱の通しにくさは汗の膜0.00017、ニトリル0.0004、保温層0.15。②危ないのは保温層が濡れること:乾いた保温層は熱の伝えやすさ0.04・通しにくさ0.15、水で満たされると0.6・0.01になり、熱が約15倍逃げやすい。実験では保温層が湿るだけで服全体の断熱が約16%低下。山岳医のともが「手が濡れても、汗の膜は体温で温まっているよ」と説明。

手の熱は、肌 → 汗の膜 → ニトリル → 保温層 → 外気と、層を順番に通って逃げていきます。
逃げる熱の量は、一番熱を通しにくい層で決まります。

  • 汗の膜は0.1mmほどととても薄く、熱の通しにくさ全体のうち約0.1%しか占めない
  • 汗の膜の中で下がる温度は約0.06℃≒汗の膜はほぼ体温のまま
  • 温度が下がるのは、ほぼ保温層の中
熱伝導の計算のしくみ(もう少し詳しく)

「熱の通しにくさ」は、層の厚さ ÷ その素材の熱の伝えやすさで求めます。
数字が大きいほど、熱を逃がしにくい(断熱性が高い)という意味です。

層厚さ熱の伝えやすさ熱の通しにくさ
汗の膜0.1mm(多めに見積もり)水 0.60.00017
ニトリル0.1mmゴム 約0.250.0004
保温層(乾いた状態)6mm空気をためた素材 約0.040.15
合計約0.15
熱の伝えやすさの単位はW/m・K、熱の通しにくさは㎡・℃/W

手(30℃)と外気(−20℃)の温度差50℃は、層を通るあいだに少しずつ下がっていきます。
どの層で何℃下がるかは、その層の通しにくさが、全体の何割を占めるかで決まります。

その層で下がる温度 = 全体の温度差 ×(その層の通しにくさ ÷ 全体の通しにくさ)

かっこの中の「その層の通しにくさ ÷ 全体の通しにくさ」が、その層が受け持つ割合です。
全体の通しにくさは、3つの層の合計(0.00017+0.0004+0.15=約0.15)です。
汗の膜なら、50℃ ×(0.00017 ÷ 0.15)= 50℃ × 約0.1% = 約0.06℃になります。

  • 保温層:全体の約99.6% → 約49.8℃下がる
  • ニトリル:約0.3% → 約0.13℃
  • 汗の膜:約0.1% → 約0.06℃

50℃の温度差を、通しにくさの割合に応じて3つの層で分け合うイメージです。
ホースの途中が1か所だけ細くなっていると、水の勢いはほとんどその細い所で落ちます。それと同じで、温度もほとんど保温層の中で下がり、汗の膜はほぼ手と同じ温度のままです。

つまり、外の冷気が汗の膜を通って直接手に伝わるわけではありません。
手を冷えから守っているのは、その外側の保温層です。

「水は熱を伝えやすい」が本当に問題になるのは、保温層の中の空気が水に置き換わったときです。
乾いた保温層の熱の通しにくさは0.15(厚さ6mm ÷ 熱の伝えやすさ0.04)。
すき間が水で満たされると、0.01(6mm ÷ 水の0.6)まで下がります。
通しにくさが約15分の1になるので、熱は約15倍逃げやすくなります。

  • 上の数値(約0.1%・約0.06℃・約15倍)は、手の皮膚30℃・外気−20℃・汗の膜0.1mm・保温層6mmなどの条件を仮定した、AIによる理論計算の目安です。実際に測った値ではありません。

濡らしてはいけないのは、手ではなく、”保温層”なのです。

普通の手袋では、汗が保温層の中で水に戻り、熱を外へ運びながら保温層を濡らしていきます。
VBLは肌のすぐ外側で水蒸気を止めるので、この流れそのものが起きません。

体から熱が逃げる仕組みについては、こちらの記事で詳しく解説しています👇

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ニトリル手袋VBLのやり方 ── 一番下に着けて、行動中は外さない

ニトリル手袋VBLのやり方の図解。ニトリル手袋・薄手のインナー手袋・保温手袋の3層を場面に応じて重ね、屋外では外さず、行動後に裏返して外し手を乾かす

なお、ニトリル手袋のVBLを人で比べた研究は、調べた限り見つかりませんでした。
ここからは、上の仕組みと、僕自身の使用経験をもとにお伝えします。

いつもの手袋の一番内側に、ニトリル手袋を足すだけ

やり方はとてもシンプルです。
普段の手袋のレイヤリングはそのままで、一番内側(素手のすぐ上)にニトリル手袋を1枚足すだけです。

  1. ニトリル手袋(使い捨て・水を通さない)← 素手の上に、まずこれを着ける
  2. いつもの手袋(インナー手袋・保温手袋など、普段使っているもの)

外側の手袋は、寒さや風に合わせて普段どおり足したり外したりして構いません。
ただし、屋外ではニトリル手袋だけは外さないでください。

一番下に着けるニトリル手袋

VBLを行うと、運動量にもよりますが、登りだと1〜2時間で手が濡れてきます。
それでもその外側にある保温層が保たれるため、外気温にもよりますが冷たさをあまり感じません。

手袋の選び方

ニトリル手袋は、手にぴったり合うサイズの薄手のものを選びます。
僕が使っているのはこちらです👇

保温手袋は、気温や風に応じて使い分けています。
使いやすければ何でも構いません。普段から使用しているものでOKです。
ニトリル手袋は基本使い捨てなので、予備を数枚持っていくと安心です。

ニトリル手袋は装着状態でもスマホを操作できるので、つけたままでも意外と問題ありません。

その日の行動が終わったら、外して乾かす

VBLは、その日の行動が終わったら解除するのが基本です。
山小屋やテントに入ってから、次の順で外します。

  1. ニトリル手袋を裏返しながら外す
  2. 手の濡れを拭いて乾かす
  3. ニトリル手袋は裏返して水気を切れば、短時間なら保管して再利用できる
  4. 破れたら交換する

数時間もつけていれば水分で手がふやけます。
不快感がすごいし、肌が弱い方だと手荒れの原因にもなります😅

テント内、山小屋内、下山後など安全地帯に着いたら、外して、拭いて、手を乾かしましょう。

VBLの注意点と向かない人 ── 濡れた手を冷たい外気にさらさない

VBLの注意点の図解。外していいのは山小屋やテントの中で、行動中や稜線では外さない。保温層が足りない・手袋がきついと冷える。手荒れする人は加硫促進剤フリーを選ぶ

行動中は外さない

VBLで最も大切な注意点です。
VBL中の手は汗で濡れています。
その濡れた手を冷たい外気に直接さらすと、汗が一気に蒸発して手が急激に冷え、凍傷の危険が高まります。

山行途中でニトリル手袋を外してはいけません!
外すのは、山小屋やテントなど、風と寒さを避けられる場所に入ってからです。

行動中に破れてしまった場合も、稜線の吹きさらしで付け替えるのは避け、風を避けられる場所で手早く交換します。

こんなときは、VBLでも冷える・危ない

「汗の膜はほぼ体温のまま」という理屈が成り立たない場面もあります。

  • 保温層が足りないとき:VBLは保温層の代わりにはなりません。手袋(保温層)そのものが寒さに負ける断熱性であれば、VBLがあっても手は冷えます。
  • ニトリル手袋がきついとき:指を締め付けると血の巡りが悪くなり、冷えやすくなります。ぴったりでも、きつすぎないサイズを選びます。
  • 何日も外さずに使い続けたとき:手の場合にはこんな方はまずいないと思いますが、足だとあるかもしれません😅長時間使い続けると皮膚がふやけます。冷えと濡れが長く続くと、凍らない寒冷障害(足で起きる塹壕足と同じ仕組み)につながります。その日の行動が終わったら、必ず外して乾かしましょう。

肌がかぶれやすい人は慎重に

VBLは、手が長時間蒸れた状態になります。
皮膚がかぶれやすい人には、あまりお勧めしません。
蒸れそのものでも手荒れすることがあります😅

手荒れする人は「加硫促進剤かりゅうそくしんざいフリー」を選ぶ

ゴム手袋をすると手荒れする方、いますよね。
その原因はラテックス(天然ゴム)だと思われがちですが、それだけではありません。ニトリル手袋はラテックスを含みませんが、別の成分で手荒れが起こることがあります👇

ラテックスアレルギー加硫促進剤アレルギー
原因天然ゴムのたんぱく質ゴムを固める工程で使う薬品
症状が出るまですぐ(即時型)数時間〜48時間(遅延型)
ニトリル手袋含まない含むものが多い

実は僕自身も、医療用の手袋で手荒れが続いていました。
皮膚科の先生に相談したところ、加硫促進剤フリー(アクセラレーターフリー)の手袋を勧められ、全く手荒れしなくなりました😊
数時間〜2日程度たってから手荒れしてくる方は、加硫促進剤が原因かもしれません。

手荒れが気になる方は、「加硫促進剤フリー」「アクセラレーターフリー」と書かれたものを選んでみてください。
それでも手荒れが続く場合は、皮膚科に相談しましょう。

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足や寝袋にも使える? ── 足は毎晩乾かせるなら選択肢、寝袋は山では現実的でない!?

足と寝袋のVBLの図解。足は薄い靴下・ビニール袋・厚手の靴下の順に重ねて毎晩乾かす。寝袋は内側に水を通さないVBLライナーを入れるが、効果は意見が分かれる

足(VBLソックス)

足先の冷えや、足汗で靴下や冬靴を濡らしてしまう方には、足のVBLという選択肢もあります。

ザ・ノース・フェイスには、アルパインクライマーの馬目弘仁氏と共同開発した「アルパインクライマーソックス」があります。
ネオプレン(ウェットスーツの素材)でできた靴下で、汗で登山靴を濡らさない・凍らせないことが目的です。
2013年には海外の高所や極寒地向けの3.0mm厚と、国内の厳冬期向けの2.0mm厚のモデルがありました。一度は販売が終わっていましたが、2025年秋冬に3.0mm厚のモデル(NN82521)が復刻され、いまは国内で購入できます。
メーカーも「1日の終わりにソックスを裏返して汗を拭き取ることで、繰り返して使える」としていて、まさにVBLの使い方です。

ゴールドウイン ニュースリリース(2013年2月20日)

身近なもので作る足のVBL(読者の方の実践例)

このブログの読者の方から、専用の靴下を使わない足のVBLの方法を教えていただきました😊
重ね方は、内側から次の順番です。

  • 袋は食パン用の袋(2斤用)が、サイズも丈夫さもちょうどよいそうです(Amazonで100枚1200円ほどで売られています)。
  • 素足に袋を直接履くと、靴の中で滑る・擦れる・つま先が痛くなるため、一番下に薄い靴下を履きます。
  • 袋のつま先は穴が開きやすいので、透明テープで補強する工夫も。袋の外側が滑る場合は、薄いゴムを貼って滑り止めにするといいそうです。

ただし、足は手以上に注意が必要です。
足が濡れて冷えた状態が数時間〜数日続くと、塹壕足(ざんごうあし:非凍結性寒冷障害)という、神経の痛みが長く残ることもある障害の原因になります。

塹壕足はどんなときに起こる?

  • 起こるには「濡れ」が必要。多くは、冷たく濡れた手足の状態が少なくとも1〜3日続いたときに起こる
  • 予防は、毎日乾いた靴下に替えること

Zafren K. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(19):10482. (PMID: 34639782)

足のVBLで一番の問題は、汗で皮膚がふやけて、靴擦れを起こしやすくなることです(実践している読者の方も、同じことを書かれていました)。
また、厚い靴下を重ねすぎると、つま先が締め付けられて血の巡りが悪くなり、かえって冷えます。靴の中に余裕があるかも確かめてください。

足のVBLも手と同じで、その日の行動が終わったら脱いで、足を拭いて乾かすことが前提です。
替えの乾いた厚手靴下も用意しておきましょう。

僕は足のVBLをまだ試したことがありませんが、さっそくアルパインクライマーソックスを購入してみました。
パン袋とドライレイヤー靴下も購入済みなので、この冬は是非いろいろと試してみようと思っています😊

寝袋

長期の遠征では、寝袋の中綿が濡れるのを防ぐために、寝袋の内側にVBLライナー(寝袋の中に入れる、水を通さない袋)を入れる方法があります。

寝袋は、使っているうちに濡れていく?

  • 氷点下で寝袋を何日も続けて使う実験(−7℃で6日間、−20℃で5日間)では、寝袋の中に92〜800gの水分がたまった

Havenith G, et al. Ergonomics. 2004;47(13):1424-1431. (PMID: 15513717)

ただし、寝袋のVBLで暖かくなるかどうかは、意見が分かれています。

  • 販売しているメーカーは「汗の蒸発で失う熱を減らし、寝袋の保温材を湿気から守る」と説明しています
  • 寝袋メーカーのWiggy’sは「蒸発で失う熱を止めるというのは誤解で、主な効果は保温材を濡らさないこと」としています

寝袋のVBLの効果を、人で比べた研究は見つかりませんでした。

しかし、寝袋用のVBLライナーは、海外では今も販売されています(日本国内の販売サイトは見つかりませんでした)。

寝袋のVBLは、僕自身はやっていませんし、あまりおすすめもしません😅
暖かいかもしれませんが、理論的にはいわゆる寝汗をかくことになり、アンダーウェアなどが濡れてしまうのではないかと思います。

ただし、専用品が売られているのは事実なので、「是非」と思う方は試していただき、コメントを頂けると嬉しいです😊
念のため、最初は山小屋へ逃げられるようなところで試してくださいね😅

緊急時のVBL ── 濡れて冷えたら、エマージェンシーシートを体に巻く

濡れた衣服で冷え、着替えが難しいときのVBL。濡れた衣服の上からアルミシートを体幹に巻き、その上から防寒着とレインウェアを着る。蒸発による熱の損失を減らす働きと輻射熱の反射を図示。

VBLの考え方は、濡れて冷えた状態で救助を待つときにも役立ちます。
低体温症の救護のために作られた「Cold Card(コールドカード)」には、濡れた衣服の扱いが次のように示されています👇

服の状態対応
乾いている・しっとり湿っている服は脱がせず、そのまま包む
びしょ濡れ避難場所・搬送まで30分以上かかるなら、風雨から守ったうえで濡れた服を脱がせて包む

Giesbrecht GG. Wilderness Environ Med. 2018;29(4):499-503. (PMID: 30309822)

服を脱がずに包むときは、濡れた服の上から、水を通さないシート(エマージェンシーシートなど)を体に巻き、その上に防寒着、さらにレインウェアを重ねます。

順番は👇

  1. 濡れた服
  2. エマージェンシーシート(体幹に沿わせて巻く)
  3. 防寒着
  4. レインウェア

エマージェンシーシートは外側に羽織るだけでは隙間から風や雨が入るので、体に沿わせて巻くことで濡れたインナーごとVBLとして蒸発を抑える、その上から防寒着(保温層)やレインウェア(防風層)で覆うのがポイントになります。

濡れた服を脱がせる?それとも上から水を通さない層を巻く?

寒い環境で、濡れた服を着た人を

  • 毛布1枚のみ
  • 脱がせる+毛布1枚で包む
  • 脱がせずにVBL+毛布1枚で包む
  • 脱がせずに毛布2枚で包む

で比べた実験。

  • VBLを加えた群は、濡れた衣服を脱がせた群と同程度に代謝(震えによって作られる熱)を減らし、皮膚温度が上昇した。
  • 風雨の中で服を脱がせるのが難しいときは、上からVBLを巻くことが代わりの手段になる

Henriksson O, et al. Wilderness Environ Med. 2015;26(1):11-20. (PMID: 25712295)

手袋のVBLも、緊急時のVBLも、考え方は同じです。
VBL=水を通さない層を肌の近くに置き、その外側の保温層を乾いたまま保つ。
だから、レイアリングの順番も変わりません。

ビバーク装備の記事でも同様の紹介をしています👇

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まとめ

VBLの3つのルールのまとめ図解。①ニトリル手袋を一番下に着ける、②行動中は外さない、③行動が終わったら外して拭いて乾かす。濡らしてはいけないのは手ではなく保温層

まとめです!

  1. ニトリル手袋を一番下に着ける
    • 汗の水分を止めて、外側の手袋の保温層を乾いたまま保つ
  2. 行動中は外さない
    • 濡れた手を冷たい外気にさらすと、一気に冷えて凍傷の危険が高まる
  3. その日の行動が終わったら外して、拭いて乾かす
    • 手荒れしやすい人は「加硫促進剤フリー」の手袋を選ぶ

ニトリル手袋は安くて軽く、ザックに数枚入れておくだけで試せます。
この冬、ぜひ一度試してみてください。手を冷やさずに、冬の山をこれからも楽しんでいきましょう!

最後まで閲覧いただきありがとうございました!

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コメント

コメント一覧 (10件)

  • 登山はしないんですが、職場が寒いので足のVBL活用しています。30〜50デニールのストッキングを履きビニール袋を被せて靴下を履けば普段履いてる靴でも入りますし効果も十分実感できます。動きが少ない時はつま先の甲やくるぶし裏辺りに貼るカイロミニをつければ足元が一番暖かくなります。当然ストッキングは湿気て独特の不快感はありますが、冷えて痛いのと比べたら遥かにマシです。副次効果で踵もツルツルになります笑

    • コメントありがとうございます。
      たしかにビニール袋を1層作るだけでもVBL効果が得られますよね。
      ストッキングを一番下にしているのは、ビニール袋が一番下だとやはり不快感が強すぎるためですか?

      • 素足にビニール袋を直接被せるのも効果は高いですがかなり滑るので靴をしっかりフィットさせる必要があります。また、滑ることでビニール袋をつま先で強く押してしまうのでつま先が痛くなります(小さい靴を履いてつま先が当たっている感じと同じです)。ビニール袋を履いた直後は逆にかなりの摩擦が起きるので擦れて皮膚が痛い時もありました。洗濯物が減るので理想的ではあるんですが痛いので断念しましたね。ストッキングは滑り止めの観点から履くようにしています。記事で気にしておられた匂いに関しては私の体質的に殆ど出ないので気になったことはないです。人によっては生物兵器と化すでしょう笑

        • 真壁さん
          返信ありがとうございます。確かに靴の中で滑りそうですね。
          登山で使ったらつま先が死にそうですね😅
          参考になりました。コメントありがとうございました!

  • 登山で足のVBLやってます
    初めはアルパインクライマーソックスでした
    なかにファイントラックのメッシュドライレイヤー靴下を穿いてました

    現在はパン袋を使ってます
    丈夫で安価で使い捨て感覚です
    2斤用がサイズ的におすすめですパン袋の中には薄手のメリノウール靴下履いたりファイントラックのメッシュドライレイヤーだったり
    上の保温層には厚手のメリノウール靴下です
    保温材の入った靴を使ってますが冷え性で色々試行錯誤中です

    タイトな靴なのであまり厚手の靴下を履くと圧迫されて冷えますのでVBLしかないといった感じです
    確かに滑るのでパン袋の外に何個か滑り止めの丸くカットした薄いゴムを張ったりしてます
    インソール裏にアルミ蒸着シート張ったりして輻射熱でかなり暖かくなって来ました

    そのうち保温材のは入ってない3シーズン用の登山靴でも試してみたいと思ってます

    • 逢坂さん
      コメントありがとうございます!
      僕も真壁さんからのコメントを受けて、ファイントラックのドライレイヤー靴下+ビニール袋がいいのかなと思っていました。
      まだ試してないですが・・・。
      パン袋がいいんですね。2斤用を買うことはあまりなのですが、参考になりました。
      チャンスがあれば試してみたいと思います。

      • 返信ありがとうこざいます
        パン袋はAmazonでポリプロピレン製100枚で710円でしたのでなかなか使い切ることはなさそうです
        靴タイトなので試着の際に無理やり足に突っ込んでつま先部分に穴開けました
        透明の荷造り用テープでつま先部分だけ補強したほうが良いかもしれません
        足のVBLの一番の問題は汗で足の皮膚がフヤけて柔らかくなって靴擦れを起こしやすいことです
        インナーソックスはファイントラックのメッシュ使ってますがモンベルの最も薄手のトラベル用メリノウール靴下もよかったです
        ウールに少し吸湿発熱もあります
        ミズノのブレスサーモも面白いのですが厚みかあるのでやめました
        安く上げるには化繊の薄手ソックスでも良いかと思います
        疎水性のあるポリプロピレン混毛のソックスも良さそうです
        以上ご参考まで

      • 返信ありがとうこざいます
        パン袋はAmazonでポリプロピレン製100枚で710円でしたのでなかなか使い切ることはなさそうです

        靴タイトなので試着の際に無理やり足に突っ込んでつま先部分に穴開けました
        透明の荷造り用テープでつま先部分だけ補強したほうが良いかもしれません

        足のVBLの一番の問題は汗で足の皮膚がフヤけて柔らかくなって靴擦れを起こしやすいことです
        インナーソックスはファイントラックのメッシュ使ってますがモンベルの最も薄手のトラベル用メリノウール靴下もよかったです
        ウールに少し吸湿発熱もあります
        ミズノのブレスサーモも面白いのですが厚みかあるのでやめました
        安く上げるには化繊の薄手ソックスでも良いかと思います
        疎水性のあるポリプロピレン混毛のソックスも良さそうです
        以上ご参考まで

        • 逢坂さん
          なるほど、Amazonでパン袋が売っているんですね。
          てっきり本当にパンを買ってその袋を使っているのかと思いました😅
          さっそくAmazonで2斤用のパン袋買ってみました。
          情報提供ありがとうございます。

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