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はじめに
こんにちは!市川です!
僕の自己紹介はコチラ

循環器内科医としての病院勤務の傍らで、国際山岳医(DiMM)として以下のような活動をしています。
✔️登山者検診/登山者外来による予防・登山サポート
✔️赤岳鉱泉山岳診療所を運営(日本で唯一冬季診療も行っている診療所)
さらに「医療から登山をもっと安全に」をミッションとしてブログを通じて登山における医学的内容を発信しています。
2026年5月末〜Tozan Medical Officeを立ち上げました。
「山岳医療を、相談できる距離に。」
まずはTozan Medical Consulting〜登山×医療相談〜という名の登山者に対する個別のオンライン面談を開始しています。興味がある方はぜひこちらのリンクから詳細をご覧ください😊
今日のテーマはこちら👇
「下山時の膝痛 ── 下りの医学」です。
登りは平気なのに、下りになると膝が痛くて痛くて…。
そんな経験、ありませんか?
下山時の膝痛は登山者の“最も多い悩み”のひとつです。
YAMAPが行った「登山の悩み調査」では、
・身体の悩みの第1位が「膝」で、およそ45%の人が膝の不調を訴えています。
山と溪谷社の読者アンケートに至っては、
・約88%が「膝の痛みを経験したことがある」と回答し、そのうち約7割が「下り」で痛むと答えています。
ところが、いざ「下りの膝痛」を調べようとすると、出てくるのは整体院やサプリの宣伝ばかり。
「なぜ痛むのか」
「何にエビデンス(科学的根拠)があるのか」
をきちんと解説した記事が、驚くほど少ないんですよね。
しかも、膝痛は「痛いだけ」で終わりません。
膝が痛むとフォームが崩れ、踏ん張りがきかなくなり、転倒 → 骨折という”下山中の大事故”に直結します。
警察庁の統計でも、「転倒」は道迷いに次いで多い遭難の原因です。
今回の記事では、「対策を”効果のエビデンスの強さ順”に並べる」という、このブログらしい切り口でお届けします。
整形外科は僕の専門ではありませんが、山岳医として、現場と文献の両方からできるだけ正確に整理していきます。
もしコチラの記事を読んでくださる整形外科医の方がいれば、是非コメントお願いします🙏
もし間違いがあれば修正いたします😅
- 膝痛は”転倒・骨折”の入口になる
- 膝痛は”関節”の「外の痛み」と「中の痛み」に分けて考える
- 下りの膝痛の正体
“伸張性収縮”と”体重の数倍の着地衝撃力” - 対策はエビデンスの強い順に:筋トレ・減量>ポール>歩き方>サポーター
- 整形外科に行くべき膝のサイン(腫れ・引っかかり・膝くずれ など)
「痛くて困っている」を、「なぜ痛むか・何をすれば効果的か」へ。
一緒にアップデートしていきましょう!
あなたの膝痛はどっち? ── 関節の「外」の痛みと「中」の痛み

ひとくちに「膝痛」といっても、医学的には大きく2つに分けて考えます。
まず「関節」という言葉の意味から。関節とは、骨と骨のつなぎ目のことです。
膝でいえば、太ももの骨(大腿骨)とすねの骨(脛骨)のつなぎ目が膝関節で、「関節包」という袋にすっぽり包まれています。
袋の中には、
- 骨の端を覆う軟骨
- クッション役の半月板
- 骨どうしをつなぐ靭帯
- 潤滑油の役割をする関節液
が収まっています。
この記事では、
関節包という袋の「中」で起きている痛みを「関節内の痛み」
袋の「外」にある筋肉や腱のつけ根で起きている痛みを「関節外の痛み」
と呼びます👇

下山の膝痛の多くは「関節外」の痛みで、ポール・歩き方・筋トレで自分で対応可能な領域です。
一方、「関節内」の痛みは整形外科の領域。ここを自己流でがんばると、こじらせます。
- 「関節外」の痛み
筋肉・腱・靭帯のつけ根の痛み(腸脛靭帯炎・鵞足炎・膝蓋腱の炎症・膝蓋下脂肪体炎・大腿四頭筋の疲労など) - 「関節内」の痛み
軟骨・半月板・靭帯・骨の問題(半月板損傷・変形性膝関節症・骨折など)
膝蓋下脂肪体はその名の通り膝蓋骨(いわゆる膝の皿)の裏にあり、「使いすぎ」が原因で膝蓋下脂肪体炎という炎症による痛みを起こします。厳密には関節包内ですが、滑膜外という特殊な位置にあります。
細かなことは覚えなくていいのですが、今回は自力対処可能な”関節外”として扱います。
見分けの目安を表にまとめました👇
| 「関節外」の痛み | 「関節内」の痛み(疑い) | |
|---|---|---|
| 痛む部位 | 指1本で「ここ」とピンポイントで示せる (お皿の周り・膝の外側・お皿の下・内側のやや下) | 膝の奥・全体 どこが痛いと示しにくい |
| 腫れ | 目立たない (腫れても、局所的にぷくっとふくらむ程度) | 膝全体がまるく腫れる・熱をもつ・水がたまる (左右で見比べると膝の輪郭が太い) |
| 膝の動き | 保たれる | 引っかかる(ロッキング) ガクッと崩れる(膝くずれ) |
| 経過 | 下りで痛み、下山後2〜3日で引く | 安静・夜間も痛む 2週間以上続く・繰り返すたび悪化 |
| きっかけ | 長い下り・重いザック | ひねった・転んだ直後から (「ブツッ」という感覚を伴うことも) |
1つ注意があります。「ピンポイントで痛む=関節外」とは限りません。
半月板損傷(関節内)では、膝の横の「骨と骨のすき間=関節裂隙」を押すと、感度83%、特異度83%で圧痛があり、半月板損傷を強く疑います。
ですから、1つの目安だけで決めないでください。
腫れ・引っかかり・経過…と、複数の項目を合わせて判断するようにしてください。

僕は循環器内科医で、整形外科は専門ではありません。
「関節内」の痛みは専門的で、僕では踏み込めないし、皆さんも個人レベルで対応できるわけではありません。
したがって、この記事では、「関節外」の痛みを自分で軽減する方法と、「整形外科に行くべき膝痛≒関節内の痛み」を見逃さない目安をお伝えします。
「関節内」のサインに心当たりがある方は、先に「整形外科に行くべき膝痛」の章へ進んでください。
「関節外」の痛みらしい方は、このまま原因と対策を見ていきましょう。
なぜ”下り”で膝が痛むのか ── 伸張性収縮と着地衝撃力
「下りでなぜ膝が痛むのか?」
ここには、はっきりとした2つの医学的な理由があります。
- 力学的要因:
着地のたびに、膝へ体重の”数倍”の衝撃がかかる - 筋肉の使い方の要因:
下りは「ブレーキ役の筋肉(伸張性収縮)」が酷使される
① 膝には”体重の数倍”の力がかかっている


人工膝関節にセンサーを埋め込んで、日常動作で膝にかかる力を”実測”した有名な研究があります。
それによると、膝にかかる力(関節接触力)はおおむね次のようになります👇
| 動作 | 膝にかかる力(体重比のめやす) |
|---|---|
| 平地歩行 | 約2.6倍 |
| 階段を上る | 約3.2倍 |
| 階段を下りる | 約3.5倍 |
人工膝関節に埋め込んだセンサーでの実測値:Kutzner I, et al. J Biomech. 2010; 43(11): 2164-2173. (PMID: 20537336)
「下る」動作では、膝に対して体重の約3.5倍もの負担がかかっています。
体重60kgの人なら、下りの一歩ごとに、膝には約200kg超の力
10kgのザックを背負えば、250kg近い力がかかる計算になります。
登山の下りは、これに「段差の大きさ」「疲労でのフォーム崩れ」が上乗せされます。
だから、平地や階段よりもさらに大きな負担が、繰り返し膝を襲うわけです。
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心肺機能的には「下りは楽」ですが、力学的にみると、下りこそ膝にとって”最も過酷な動作”になります。
② 下りの主役は”ブレーキ筋”=伸張性収縮


次に、筋肉の使い方の話です。ここが下り特有のポイントです。
通常、筋肉は短縮することで筋力を発揮します。
最も有名な筋肉?である上腕二頭筋を思い出してください。いわゆる力こぶを示す際には肘を曲げますよね。
これは上腕二頭筋を収縮(短縮)させることで肘を曲げているのです。
一方で、下りでは、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)は、「伸ばされながら力を出す」という特殊な働き方をします。
これを伸張性収縮(エキセントリック収縮)と呼びます。
大腿四頭筋は太ももの前面に付着しており、本来は膝を伸ばすための筋肉です。
しかし、下るときには下側の足が地面に接地した瞬間、体重を支えながら膝を曲げます(大腿四頭筋が収縮しながら伸びる)。
この伸張性収縮は、登山後の”あの太もものひどい筋肉痛(遅発性筋痛=DOMS)”の主因でもあります。
下りが長い山ほど、翌日〜翌々日に太ももがパンパンになるのは、まさにこのメカニズムです。
そして厄介なのは、大腿四頭筋が疲れてくると、膝を守る”筋肉のクッション”が効かなくなること。
すると、着地衝撃力がさらに増大し、ダイレクトに膝関節へ流れ込み、痛みが出やすくなります。
「下山の後半になるほど膝が痛くなる」のは、この”筋肉のバテ”が大きく関わっています。
イメージは”自転車のブレーキ”
- 下りでは、体が”落ちよう”とするのを、太ももの筋肉が踏ん張ってブレーキをかけ続けている
- ブレーキ役(伸張性収縮)は、筋肉が傷つきやすい
- 傷ついた筋肉は筋力が低下するため、下りの着地衝撃力がさらに強まる
➜下りは、膝周りが”最も傷みやすい”使われ方をしている!
登山後の太ももの筋肉痛(DOMS)そのものの予防・ケアについては、こちらの記事で詳しく解説しています👇


僕も愛読している山本正嘉先生が書かれた「登山の運動生理学とトレーニング学」👇️
今回の記事にも引用させていただいてる登山に関する運動生理がとても詳しく書かれていてオススメですよ😊
膝痛は”転倒・骨折”の入口 ── 下山中に事故が集中する理由


下山時の膝痛は、「痛くてつらい」だけの問題ではありません。
膝痛 → フォームの崩れ → 転倒・滑落 → 骨折 → 動けない → 低体温症という、命に関わる遭難連鎖の入口になり得ます。
実際、警察庁の統計では、「転倒」は道迷いに次いで多い遭難の原因です(令和7年は遭難者3,623人の19.2%)。
北アルプス・八ヶ岳を抱える長野県では、転落・滑落・転倒を合わせると遭難全体の半分を超えます(51.4%・令和7年)。
そして、転ぶのは圧倒的に下りです。
オーストリア・アルプスで7年間・7,552人の山岳事故を分析した研究では、女性の事故の69%が下山中に起きていました。
警察庁 令和7年における山岳遭難の概況/長野県警察 令和7年 山岳遭難統計/Rausch L, et al. AIMS Public Health. 2024; 11(1): 160-175. (PMID: 38617419)
なぜ下りで転ぶ・ケガをするのか
- 疲労のピーク:下山は行程の後半=筋肉も集中力も消耗しきっている
- 膝痛によるフォーム崩れ:痛みをかばうと、踏ん張り・バランスが崩れる
- 重力方向の動き:前のめりに落ちる力が常に働き、一度崩れると止めにくい
- 「もう着く」という気のゆるみ:注意力が落ちるタイミングと重なる
同じオーストリアの研究では、骨折は女性が男性の2倍以上でした(女性68.5%・男性31.5%)。
加齢とともに骨密度が下がると、ちょっとした転倒でも骨折に至りやすくなるのです。
特に女性は閉経前後から骨密度が下がりやすく、「膝痛 → 転倒 → 骨折 → 自力下山不能 → 遭難」という連鎖が、決して他人事ではありません。



膝痛対策は、単なる”快適さ”の問題ではありません。
膝を守ることは、下山中の転倒・骨折という大事故を防ぐこと。
ここを意識できるかどうかで、対策への本気度が変わります。
「下りでバテて膝がガクガク」という状態は、心肺の疲労や心拍のコントロールとも無関係ではありません。
“バテ”そのものを減らす歩き方については、こちらもあわせてどうぞ👇


対策を”エビデンスの強さ順”に並べる
膝痛対策には、じつにさまざまなグッズ・方法があふれています。
まず大事なのは、「どの対策に科学的根拠(エビデンス)があるのか」を知っておくことです。
その上で、感覚・モチベーションも決して馬鹿にできません。
自分の感覚も大切にしてテンションが上がる自分にあった方法を見つけてください。
下りの膝痛に対する4つの対策(エビデンスの高い順)👇
- 筋トレ(大腿四頭筋)・減量:膝痛を減らす確かさは第一級=全ガイドラインの第一選択
- トレッキングポール:今日から有効!膝への負荷を直接減らす
- 歩き方・段差の下り方:負担を減らす基本技術
- 膝サポーター:エビデンスは限定的だが、安心感には意味がある
順番に見ていきましょう!
① 筋トレ(大腿四頭筋)・減量 ── いちばん根本的な”下地”


時間はかかりますが、いちばん根本的で、いちばん裏切らない対策がこれです。
下りの膝を守っているのは、結局のところ太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)です。
この筋肉が強ければ、着地の衝撃を筋肉が吸収し、膝関節そのものへの負担が減ります。
実際、変形性膝関節症の治療でも、運動療法は”第一選択”としてすべての診療ガイドラインで推奨されています。
Bennell KL, Hinman RS. J Sci Med Sport. 2011; 14(1): 4-9. (PMID: 20851051)
「膝が痛いから動かさない」ではなく、「適切に鍛える・動かす」ことが、膝を守る王道なのです。
54の比較試験をまとめたコクランレビューでも、運動療法の痛みへの効果は「高品質のエビデンス」と評価され、効果の大きさは痛み止め(NSAIDs)に匹敵するとされています。
エビデンスの格では、これが膝痛対策の本命です。
Fransen M, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015; (1): CD004376. (PMID: 25569281)
- スクワット(浅めでOK)や椅子からの立ち座りで大腿四頭筋を強化
- 膝に不安がある人は、まず座って膝を伸ばす運動(レッグエクステンション)から
- 下りに強くなるには、階段の”下り”や、ゆっくり下る動作で伸張性収縮に体を慣らす=低山トレーニング
そしてもうひとつが減量。
膝には歩行で体重の約2.6倍、下りで約3.5倍の力がかかると説明しました。
変形性膝関節症の患者さんでの研究ですが、
体重が1kg減ると、歩行時の膝への負荷は1歩あたり約4kg分減ります。
Messier SP, et al. Arthritis Rheum. 2005; 52(7): 2026-2032. (PMID: 15986358)
負荷が数倍になる下りでは、さらに大きく効きます。
膝痛に悩む方にとって、減量は”最も有効な”対策のひとつです。
筋トレに関してもうちょっと詳しく知りたいという方はコチラ👇️の書籍に図解して書かれていますので、ぜひ購入して読んでみてください。
山好きの整形外科医 小林哲士先生が書かれた本でわかりやすいですよ。
② トレッキングポール ── 下りの膝負担軽減は”エビデンスあり”


結論から言います。
今日からすぐに効果が得られるのは、トレッキングポールです。
“なんとなく良さそう”ではなく、膝にかかる力そのものを減らすことが複数の研究で直接示されている、数少ない実用的な対策です。
下りの膝痛は、この記事で見てきたとおり「膝にかかる着地衝撃力」と「大腿四頭筋の伸張性収縮による筋損傷」が2大原因でした。
トレッキングポールは、その両方に有効であることが分かっています。
25度の下り坂で、ポールあり/なしの下山中の膝への負荷を計測した研究があります。
その結果、ポールを使うと、
- 地面反力・膝関節にかかるモーメント・膝関節の圧迫/せん断力が、いずれも約12〜25%減少
- 膝のお皿まわりの圧迫力や、大腿四頭筋(外側広筋)の活動も同じ傾向で低下(こちらはばらつきが大きく、統計的な有意差はなし)
Schwameder H, et al. J Sports Sci. 1999; 17(12): 969-978. (PMID: 10622357)
つまり、ポールは”膝にかかる力そのもの”を1〜2割減らしてくれるわけです。
体重を、腕とポールに”分散”させているイメージですね。
さらに、“筋損傷=筋力低下を減らす”というデータもあります。
健康な37名を「ポールあり/なし」の2グループに分けて、イングランドとウェールズの最高峰スノードン山を登り下りしてもらい、筋損傷の指標を比較した研究では…、
ポール群では、
- 登山後の筋力低下がゆるやか(筋機能が保たれた)
- 24〜48時間後の筋肉痛が有意に少なく、筋損傷マーカー(CK)も低かった
Howatson G, et al. Med Sci Sports Exerc. 2011; 43(1): 140-145. (PMID: 20473229)
これらを踏まえて、「下りの膝を守る」目的で、ポールは自信をもっておすすめできると言えます。



僕自身も、下りが長い山や荷物が重い山行ではトレッキングポールを使っています。
(2本使ったほうが筋力低下は防げますが、僕は手が使いづらくなるバランスを考えて1本使用が好みです)
ただし、ネガティブな意見も言っておくと、
- ポールは膝の負担を腕へ移すため、使い方を誤ると上半身の疲労はむしろ増えます
下肢筋力≫上肢筋力なので、腕に頼る登り方はお勧めしません。 - 使い方(長さ調整・つき方)を誤ると効果が下がり、かえってバランスを崩すことも
初心者の方は、具体的なトレッキングポールの使い方に関して、登山ガイドやベテラン登山者に教えてもらってください。
それでも、「膝を守る」という目的に対しては、費用対効果が最も高い対策だと言えます。
本数は、膝の保護が目的なら2本。
2本なら左右で体重を分散できて下りの安定感も増します。長さは下りでは少し長めに調整してください。
(※前述の通り、僕は1本使用が好みです)
僕はヘリノックスのLBB120というトレッキングポールを長年愛用しています。
- 3つ折りではなく、伸縮タイプ:添え木やザック搬送などに使いやすい
- 伸縮タイプではおそらく最短の51cm:ザック内に収納可能
- レバーロックボタンが優秀で伸縮操作がストレスゼロ
ただし、唯一の欠点は人気なのか製造数が少ないのか、万年売り切れです😅
もし販売しているところを見かけたらぜひ入手しておいてください!
\ 僕の愛用トレッキングポール /
コチラ👇️はツイストロックなので伸縮はちょっと手間ですが、その分、1本155gと最軽量級です。
短縮サイズも53.5cmとLBB120には及ばないもののなかなか優秀です。



ポールは使ったその日から効果がありますが、筋トレと減量は、数か月かけて徐々に効いてきます。
時間はかかりますが、根本解決は筋トレ&減量ですので、両方をコツコツ続けるのが、いちばん確実です。
③ 歩き方・段差の下り方 ── 一歩の”衝撃”を減らす


道具の前に、あるいは道具と一緒に、「歩き方」で衝撃を減らすことも大切です。
ポイントは、「膝への”ドスン”という衝撃をいかに小さくするか」です。
- 歩幅を小さく:大股で下りると落差=衝撃が増える。小刻みに
- 膝を軽く曲げたまま着地:膝を伸ばしきって着地すると衝撃が逃げない
- 大きな段差は”斜め”や”横向き”で:正面から一気に落ちない
- 足裏全体でそっと置く:かかとから叩きつけない
- 疲れる前に休む:筋肉がバテるほどクッションが効かなくなる
これらは”○%減る”という数字で示すのは難しいですが、「膝にかかる力」と「伸張性収縮の負担」を減らす、理にかなった工夫です。
ポールと組み合わせれば、効果はさらに高まります。
④ 膝サポーター ── エビデンスは限定的。でも”安心感”には意味がある
最後に、膝サポーターです。
メーカーには怒られるかもしれませんが…😅
膝サポーターやサポートタイツについては、「下山時の膝痛を明確に防ぐ」という強いエビデンスは、正直まだ乏しいのが現状です。
「サポートタイツで膝痛は防げるのか?」というテーマは、以前この記事で詳しく掘り下げました👇


とはいえ、「だから無意味」と言うわけではありません。
膝サポーターには、次のような効果が期待できます👇
- 固有感覚(関節の位置感覚)を助け、”安心感”につながる
- ぐらつきやすい膝を軽く支え、フォームを安定させる助けになる場合がある
- 保温や、皮膚のこすれ・軽い揺れの軽減
「サポーターをつけていると、下りで踏ん張れる感じがある」──この安心感そのものが、慎重な歩行や継続的な登山につながるなら、それは立派なメリットです。
ただし、
- 「サポーターがあれば膝痛を予防できる・痛みが消える」わけではない
- ポールや筋トレの”代わり”にはならない
ため、あくまでサポートとして使用をお勧めします。
今回の話題とは異なりますが、コンプレッションタイプのサポートタイツは筋肉痛からの回復に一定の効果が示されています。以下のようなタイツを回復期に履くことはおすすめです。
\ コンプレッション機能モデル /
\ リカバリーモデル! /
山の中で膝が痛くなったら ── その場でできること


ここまでの対策は、痛くなる前の備えの話でした。
この章では、下山の途中で実際に膝が痛くなったとき、その場でできることをまとめます。
まずは冷やして、下山後は温める
- 痛みが出た直後は冷やし(沢の水や濡らしたタオル)、下山後・帰宅後は温めて血流を回す
一般的には、登山中に怪我や使いすぎで膝痛が出た場合、まずは痛みを軽減させるために冷やすことをお勧めします。
怪我や使いすぎでは炎症を起こしていることから、炎症を抑える目的で冷やすことが良いとされています。
目安としては、「10分冷やして、40〜50分冷やすのをやめる」を数回繰り返すのがよいとされています。
氷があればベストですが、山中で手に入れられることはまずないので、雪渓、沢水などになるでしょう。
「登山でよく膝が痛くなる」という方は瞬間冷却パックを持ち歩くのもよいかもしれません。
一方で、登山終了後に身体を休める際には、温めたほうが良いです。
筋肉を温めることで血流を促し、筋肉の修復を促します。



温めるという意味でも、下山後の温泉はオススメです
テーピングは効くのか?── 「痛みの軽減」には効果があります
登山者の皆さんが大好きなのがテーピングです😊
ファーストエイド講習会などでも定番ですね。果たしてテーピングには効果があるのでしょうか?
結論からいうと、貼った直後の痛みを減らす効果には一定の根拠があります。
一方で、数週間〜数か月かけて膝痛を”治す”効果は確立していません。
治療として期待するものではなく、痛みを抑えて、下山するための道具と考えてください。
僕のザックには非伸縮テープ・キネシオロジーテープの両方が入っています。
いちばん効果が明確なのは、非伸縮テープでお皿を軽く内側に寄せて貼る方法(膝蓋骨テーピング=マコーネルテーピング)です。
- 貼った直後の痛みを減らす効果に、中等度のエビデンス(20研究の系統的レビュー)
- 変形性膝関節症を含む慢性の膝痛でも、テープなしと比べて約2割の痛みの軽減(16試験のメタ解析)
Barton C, et al. Br J Sports Med. 2014; 48(6): 417-424. (PMID: 24311602)
Warden SJ, et al. Arthritis Rheum. 2008; 59(1): 73-83. (PMID: 18163413)
貼り分けの目安は以下のとおりです👇
- お皿の周り・お皿の奥・変形性膝関節症の痛み:非伸縮テープでお皿を内側に寄せる貼り方
- かぶれやすい人・貼り方に自信がない人:キネシオロジーテープ
効果は小さめですが、固定力が弱い分、誤って貼っても害になりません。偽テープとの比較で短期の痛みの軽減が示されています。
Aldalati AY, et al. Rheumatol Int. 2025; 45(4): 107. (PMID: 40232317)
テープの使い分けについてはコチラの過去記事でも解説しています👇️


膝蓋骨テーピング=マコーネルテーピングの貼り方は、以下の動画がわかりやすくてオススメです。
エビデンスに基づく理学療法で定評のある理学療法士チャンネルPhysiotutorsの実演を2本紹介します👇
(音声は英語ですが、設定から日本語字幕を表示できます)
非伸縮テーピングは足首は38mm幅、膝は50mm幅がオススメですが、「2種類も持ち歩けないよ」っていう方は38mm幅で両方代用してもかまいません。
キネシオロジーテープは50mm幅をお勧めします。
痛み止めの考え方
痛み止めは治療しているわけではないので根本的な解決にはなりません。
でも、下山しないとどうしようもないわけですので、「痛みを軽減させて、安全に下山するため」には選択肢になります。
オススメは、以下の2つです。
いずれも市販薬なので手軽に購入可能です。
これらの薬剤の使い分けについては、以下の過去記事で解説しています。
薬剤はアレルギーなどの問題もあるため、必ず以下の記事も読んでから使用するようにしてください。


救助要請をためらわない目安
- 膝全体の腫れ
- 引っかかり
- 膝くずれ
が出たら、無理せず救助要請も選択肢にしましょう。
仮に歩けても、関節内の障害の可能性が高く、無理に行動すれば悪化し、その後の治療が大変になります。
次の章で、整形外科に行くべきサインを具体的にまとめます。
整形外科に行くべき膝痛 ── 「関節内」のサイン


下りの膝痛の多くは「関節外」の痛みで、休めば軽快します。
でも、なかには「ただの筋肉痛・使い過ぎ」で片づけてはいけない膝痛があります。
次のような「関節内」を疑うサインがあれば、整形外科の受診を検討してください👇
- 膝がはっきり腫れている・熱をもっている
関節内の炎症・水がたまっているサインのことがある - 膝が”引っかかって”急に動かなくなる/伸ばせない
ロッキングといって、半月板損傷などを疑います - 膝が”ガクッと”抜ける・崩れる感じ(膝くずれ)
- ひねった直後から強く痛み、体重をかけられない
靭帯・半月板損傷、骨折の可能性があります - 膝の皿(膝蓋骨)だけを押しても痛い
- 膝を90度まで曲げられない
- 安静にしていても痛む・夜間に痛む/みるみる悪化する
- 痛みが2週間以上続く・山行のたびに悪化していく
これらは、半月板・靭帯の損傷、進行した変形性膝関節症、骨折・疲労骨折などのサインであることがあります。
「山でよくある膝痛」と自己判断せず、専門医の評価を受けることが大切です。
「水がたまっているかどうか」の目安はシンプルで、左右の膝を見比べることです。
お皿の上あたりが反対側よりふくらんでいる・お皿の輪郭がぼやけて見える場合は、関節に水がたまっているサインです。
変形性膝関節症でも、山に登り続けていい?
変形性膝関節症は中高年女性に多い疾患で、登山者にも少なくはありません。
結論から言うと、「変形性膝関節症=即・登山禁止」ではありません。
前述のとおり、変形性膝関節症では運動そのものが治療の柱であり、”動かないこと”はむしろ膝を弱らせます。
大切なのは、「膝の状態に合わせて、登り方を最適化する」こと。
- まずは主治医(整形外科)と相談し、自分の膝で「どこまでOKか」を確認する
- 下りの多い急峻な山・長時間の下山は負担が大きい ➜ 山選び・行程の見直し
- ポールは必須級、大腿四頭筋の強化を並行
「持病があるけれど山を続けたい」──その気持ちに、医学の側から一緒に落としどころを探すのが、僕たち山岳医の役割だと思っています。
「グルコサミン・コンドロイチン」は効果があるのか?
人気のサプリですが、変形性膝関節症への効果は大規模研究で示されておらず、主要な診療ガイドラインも積極的にはすすめていません。
「絶対に無駄」とまでは言いませんが、ポール・筋トレ・減量という”有効な対策”が先です。
持病や服薬がある方は、始める前に主治医に相談してください。
まとめ
まとめです!
長くなりましたが、この記事で覚えてほしいのは、この2つ。
- 膝痛は、関節の外か中かをまず見分ける
- 対策はまずは”筋トレ・減量>ポール>下り方>サポーター”の順に考えて、”自身の納得感”がある方法を選ぶ


そして、対策はエビデンスの高い順に次の4つ👇
- 筋トレ&減量:膝痛を減らす力が最も確かだが、根気と時間が必要。
- トレッキングポール:下りの膝負担を約1〜2割減らす。
- 下り方を工夫する:歩幅を小さく・膝を軽く曲げ・段差は斜めに。
- サポーター:”安心感”の補助として
- 膝全体の腫れ
- 引っかかり(ロッキング)
- 膝くずれ
- 夜も痛む
といった「関節内」のサインがあれば、「山でよくあること」で済ませず、整形外科で診てもらってください。
膝を守ることは、下山中の転倒・骨折という”大事故”を防ぐことにつながります。
膝の痛みは、体からの大事なサインです。
下りは、山行のなかで最も気が抜けやすく、最もケガの多い時間帯。
でも、正しく備えれば、膝の痛みも、その先の事故も、しっかり減らせます。
最後まで、笑顔で下山しましょう!
最後まで閲覧いただきありがとうございました!
※本記事は医療情報の提供を目的としており、個別の医療行為を推奨するものではありません。実際の症状や治療については、必ず医師・医療機関にご相談ください。










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